柔軟剤の匂いは全自動でも香りは残せる!「脱水1分」と「ためすすぎ」の魔法
「最近の洗濯機、汚れはよく落ちるけど、なんだか香りも一緒に消えてない?」
せっかくお気に入りの柔軟剤を使っているのに、洗い上がりのタオルから期待したほどの香りがしない。そんな違和感を抱いたことはありませんか?
「私の鼻がおかしくなったのかな?」「柔軟剤の量が足りないのかな?」と不安になって、ついつい規定量より多く入れてしまう…。でも、実はそれ、あなたが悪いのでも柔軟剤が悪いのでもありません。
犯人は、あなたの家の「優秀すぎる全自動洗濯機」です。
今日は、全自動洗濯機の「お任せコース」を卒業し、「ためすすぎ」「脱水1分」「手動つけ置き」という3つの設定を変えるだけで、規定量のまま劇的に香りを復活させる「ハイブリッド洗濯術」を伝授します。
誰でも今日からできる簡単な方法で、明日の洗濯から「あの香り」を取り戻しましょう。
この記事の著者
佐々木 綾子(ささき あやこ)
ランドリースペシャリスト / 家事効率化アドバイザー

クリーニング師の資格を持ち、大手家電メーカーで洗濯機開発のアドバイザーを歴任。「機械に使われるのではなく、使いこなす」をモットーに、科学的な視点から家事を楽にする方法を提唱する理系ママ。著書に『科学で洗う、ロジカル洗濯術』など。
なぜ「全自動にお任せ」だと柔軟剤が匂わないのか?
「柔軟剤を倍入れても匂わないんです…」
そんな相談をよく受けますが、結論から言うと、量を増やしても解決しません。なぜなら、全自動洗濯機にとって、柔軟剤の香り成分は「落とすべき汚れ」と同じだからです。
私がメーカーの開発現場にいた頃の話ですが、洗濯機の性能テストでは「いかに洗剤を残さないか(すすぎ性能)」と「いかに水分を飛ばすか(脱水性能)」が最重要視されます。「香り残り」なんて二の次、三の次なんです。
最新の全自動洗濯機は、節水と時短のために「注水すすぎ(水を流しっぱなしにする)」や「強力な脱水(7分以上)」を標準設定にしています。
想像してみてください。せっかく柔軟剤で香り付けをしたのに、その直後に大量の水で洗い流され、さらに遠心力で徹底的に吹き飛ばされている様子を。これでは、どんなに高級な柔軟剤を使っても香りが残るはずがありません。
つまり、香りを残したいなら、機械任せの「標準コース」を疑い、私たちが少しだけ知恵を貸してあげる必要があるのです。
専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「標準コース」は汚れ落としには最適ですが、香り付けには不向きです。
なぜなら、多くの人が「洗濯機は全自動だから何もしなくていい」と思い込んでいますが、実は「洗い」と「香り付け」は相反する行為だからです。汚れを落とす設定のまま香りを残そうとするのは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもの。設定を変える勇気を持ちましょう。
香りを最大化する「ハイブリッド洗濯術」3つの鉄則
では、具体的にどうすればいいのでしょうか?
私が提唱する「ハイブリッド洗濯術」は、全自動の便利さを活かしつつ、ここぞというポイントだけ手動で介入する方法です。
重要なのは以下の3ステップです。
1. 「注水」から「ためすすぎ」へ
まず、全自動洗濯機と柔軟剤の香りの関係において最大の阻害要因となっているのが「注水すすぎ」です。
多くの標準コースでは、洗剤残りを防ぐために、新しい水をどんどん入れて排水しながらすすぐ「注水すすぎ」が採用されています。これでは、投入された柔軟剤も水と一緒に排水溝へ流れていってしまいます。
そこで、設定を「ためすすぎ」に変更します。
「ためすすぎ」は、洗濯槽に水をためて、その中で衣類を泳がせるようにすすぐ方法です。水が留まるので、柔軟剤の成分がしっかりと水に溶け出し、衣類の繊維一本一本に浸透する時間を確保できます。

2. 「脱水」は「1分」が正解
次に重要なのが脱水時間と香り成分の関係です。
標準の脱水時間は7?9分程度ですが、これは乾きやすさを優先した設定です。しかし、強い遠心力を長時間かけ続けると、水分と一緒にせっかく付着した香り成分(マイクロカプセルなど)まで吹き飛ばされてしまいます。
香りを残すための最適解は、「脱水1分」です。
「えっ、そんなに短くて大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、最近の洗濯機は回転数が高いので、1分でも水滴が垂れない程度には脱水できます。部屋干しでもサーキュレーターなどを併用すれば十分乾きますし、何より香りの残り方が劇的に変わります。
3. 「手動つけ置き」の裏ワザ
さらに香りを定着させたい場合の奥の手がこれです。
2回目のすすぎ(ためすすぎ)で水がたまり、柔軟剤が投入されて撹拌が始まったら、一時停止ボタンを押して30分?1時間ほど放置します。
いわゆる「つけ置き」の状態を作ることで、柔軟剤の成分がじっくりと繊維の奥まで浸透します。その後、再開して「脱水1分」で仕上げれば完璧です。
規定量でOK!「香害」を防ぎながら香りを楽しむコツ
「香りを残したいから、柔軟剤を多めに入れています」
もしあなたがそうしているなら、今すぐやめてください。それはお財布に優しくないだけでなく、周囲への「香害(スメルハラスメント)」につながる危険な行為です。
国民生活センターの調査によれば、柔軟剤の使用量を2倍にしても、香りの強さはそれほど変わらないことがわかっています。
柔軟仕上げ剤の使用量を2倍にしても、香りの強さは2倍にはならず、むしろTVOC(揮発性有機化合物)の総量が顕著に増加することが確認されました。
出典: 柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供 - 国民生活センター, 2020年4月9日
つまり、量を増やすことは、自分にとってのメリット(良い香り)は少ないのに、周囲へのデメリット(化学物質の拡散)だけを増大させる行為なのです。
今回ご紹介した「ためすすぎ」と「脱水1分」の設定変更を行えば、規定量のままでも十分に、いや、今まで以上に香りを残すことができます。 香害と規定量の関係を正しく理解し、マナーを守って香りを楽しむことこそ、賢い大人の洗濯術です。
メーカー別・機種別「設定変更」クイックガイド
「ためすすぎ」や「脱水時間」の変更方法はメーカーによって多少異なります。代表的なメーカーの操作ヒントをまとめました。
| ** ?? *比較表表タイトル:* 主要メーカー別 設定変更のヒント | メーカー | 「ためすすぎ」の名称・表示 | 設定変更のコツ |
|---|---|---|---|
| パナソニック | 「ためすすぎ」または「すすぎ回数」設定で選択 | 「コース」選択後、「すすぎ」ボタンを数回押して「注水」ランプを消す。 | |
| 日立 | 「ナイアガラすすぎ」など | 「すすぎ」ボタンで回数を選ぶ際、注水マークがつかない設定を選ぶ。 | |
| 東芝 | 「ためすすぎ」 | 「設定」ボタンから「すすぎ」を選び、注水設定を解除する。 | |
| シャープ | 「ためすすぎ」 | 「すすぎ」ボタン長押しで注水/ための切り替えができる機種が多い。 |
※正確な操作方法は、お手持ちの洗濯機の取扱説明書をご確認ください。「型番 取扱説明書」で検索すると、Web上でも閲覧できます。
よくある質問:部屋干しや乾燥機の場合は?
Q. 部屋干しの方が匂う気がするのですが?
A. その通りです。でも「生乾き臭」には注意!
外干しは紫外線や風で香りが飛びやすいのに対し、部屋干しは湿度が保たれるため香りが残りやすい傾向があります。ただし、乾燥に時間がかかると雑菌が繁殖し、柔軟剤の香りと生乾き臭が混ざった不快なニオイになりかねません。「脱水1分」にする場合は特に、扇風機や除湿機を使って「速く乾かす」工夫をセットで行ってください。
Q. 乾燥機を使うと香りが飛んでしまいます。
A. 熱で飛んでしまうので、「後付け」がおすすめです。
乾燥機の熱風は、柔軟剤の香り成分を揮発させてしまいます。乾燥機を使う場合は、洗濯時の柔軟剤に頼るのではなく、乾燥機専用の「柔軟剤シート(ドライヤーシート)」を一緒に放り込むのが効果的です。これなら熱に負けずに香りをつけられます。
まとめ:今日からできる「バナナの特等席」作り
…失礼しました、バナナではなく「香りの特等席」ですね。
全自動洗濯機で香りを残すためのポイントをおさらいしましょう。
- 「注水」をやめて「ためすすぎ」にする(流さない!)
- 「脱水」は「1分」にする(飛ばさない!)
- 余裕があれば「手動つけ置き」をする(染み込ませる!)
たったこれだけで、あなたの洗濯機は「ただ汚れを落とす機械」から「香りをデザインするマシン」へと進化します。
もう、高い柔軟剤をドボドボ入れて罪悪感を感じる必要はありません。
今すぐ洗濯機の前に行って、設定ボタンを押してみてください。「ためすすぎ」のランプが点灯したら、それが香りの復活へのサインです。
明日の朝、洗濯機のフタを開けた瞬間に広がる「あの香り」を、ぜひ楽しんでくださいね。