逆子かどうか分かる方法は?胎動のサインと32週で「絶対にやってはいけない」確認方法
この記事の著者:
高橋 恵子(本人希望により仮名)
助産師 / マタニティヨガインストラクター

総合病院の産科病棟で15年間勤務し、延べ3,000人以上の妊婦さんのケアに携わってきました。現在は地域でマタニティクラスを主宰し、「赤ちゃんのタイミングを信じて待つ」ことの大切さを伝えています。
「先生、昨日おへその下を蹴られたんです。まだ逆子ですよね…」
検診のたびに、そんな不安な声をよく耳にします。妊娠32週、そろそろ「帝王切開」という言葉が現実味を帯びてくる時期ですよね。毎日逆子体操を頑張っているのに、なかなか結果が出ないと、「私の努力が足りないのかな」と自分を責めてしまう気持ち、痛いほどよく分かります。
でも、焦るあまりにお腹をグイグイ触って確認するのは絶対にNGです。実は、赤ちゃんが一番回りたくなるのは、ママが「もうどっちでもいいや」と肩の力を抜いた瞬間だったりするんですよ。
この記事では、助産師の視点から「胎動の位置から逆子かどうかを推測する目安」と、今あなたにしてほしい「一番効果的な逆子ケア」についてお話しします。どうか、温かい飲み物でも片手に、リラックスして読んでみてくださいね。
「治ったかな?」毎日不安なあなたへ。逆子と頭位の胎動の違い
「次の検診まで待てない」「今すぐ安心したい」。そんな時、一番の手がかりになるのはやはり「胎動」です。赤ちゃんの手足がどこにあるかを知ることで、頭の位置をある程度推測することができます。
ここでは、逆子(骨盤位)の状態と、頭位(頭が下にある正常な状態)で、胎動を感じる位置がどう違うのかを解説します。
1. 逆子(骨盤位)の場合の胎動サイン
逆子の状態では、赤ちゃんの足が子宮の下の方(骨盤側)にあります。そのため、キックなどの強い胎動を「膀胱、肛門、恥骨のあたり」で感じることが多くなります。
- 膀胱への刺激: トイレが近くなったり、膀胱を直接蹴られるような鋭い痛みを感じたりします。
- 下腹部での胎動: おへそより下の位置で、ポコポコと激しく動く感覚があります。
2. 頭位(治った状態)の場合の胎動サイン
赤ちゃんが頭を下に向けると、足は子宮の上の方(ママの胸側)にきます。そのため、強いキックを「肋骨やみぞおちのあたり」で感じるようになります。
- 肋骨へのキック: 「ウッ」と声が出るくらい、肋骨を強く蹴り上げられる感覚があれば、足が上にある(=頭が下にある)可能性が高いと言えます。
- 足の付け根のモゾモゾ感: 頭が骨盤にはまると、足の付け根あたりで手による細かい動き(モゾモゾ感)を感じることがあります。
しゃっくりの位置は参考になる?
よく「しゃっくりをおへその下で感じたら頭位」と言われますが、これはあくまで参考程度に留めておきましょう。しゃっくりの振動は骨盤全体に響くため、位置だけで断定するのは難しいのが現実です。
【重要】お腹をグイグイ押してない?セルフチェックの危険な落とし穴
「ここにある硬いのが頭かな?それともお尻かな?」
お風呂上がりや寝る前、ついお腹を触って確かめたくなりますよね。
しかし、私たち医療従事者が行う「レオポルト触診法(お腹を触って胎児の位置を確認する方法)」は、専門的な訓練を受けた上で行う医療行為です。一般の方が自己判断でお腹を強く押して確認しようとする行為(自己流の触診)には、重大なリスクが伴います。
素人の触診が引き起こす「常位胎盤早期剥離」のリスク
最も怖いのは、強く押す刺激によって「常位胎盤早期剥離」を引き起こしてしまうことです。これは、赤ちゃんがまだお腹の中にいるのに、胎盤が壁から剥がれてしまう緊急事態です。母子ともに命に関わる危険性があるため、絶対にお腹を強く圧迫してはいけません。
また、「確認したい」という不安から頻繁にお腹を触ること自体が、子宮への刺激となり、お腹の張りを誘発してしまいます。お腹が張ってカチカチになると、赤ちゃんは窮屈で回りにくくなってしまいます。
専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: お腹を触って確認するのは、今日からきっぱりやめましょう。代わりに「優しくさする」だけにしてください。
なぜなら、多くの妊婦さんが「良かれと思って」確認していた行為が、実は赤ちゃんを窮屈にさせ、回転を妨げる原因になっていることが多いからです。「頭はどっち?」と探る手つきよりも、「こっちが頭だよ?」と優しく撫でる手つきの方が、赤ちゃんもリラックスして動きやすくなりますよ。
32週はまだ回る!「確認」よりも今一番効果的なのは「リラックス」
「32週でもう逆子なんて、帝王切開確定なのかな…」と諦めかけていませんか?
いいえ、まだ諦める時期ではありません。
データが示す「32週の可能性」
国立成育医療研究センターなどのデータによると、妊娠30週で約15%いた逆子は、分娩時には約3?5%まで減少します。つまり、32週から36週の間は、多くの赤ちゃんが自然にクルッと回る時期なのです。
妊娠30週では約15%が骨盤位ですが、妊娠37週以降(正期産)で骨盤位なのは全体の3?5%程度です。つまり、妊娠中期に骨盤位であっても、分娩時までに大部分は頭位に直ります。
出典: 逆子(さかご)について - 国立成育医療研究センター
「焦り」と「お腹の張り」の悪循環を断ち切る
ここで重要なのが、「ストレス(焦り)」と「子宮収縮(お腹の張り)」の因果関係です。
- 「治さなきゃ」と焦る。
- 自律神経の交感神経が優位になり、体が緊張する。
- 子宮の筋肉が収縮し、お腹が張る。
- 子宮内のスペースが狭くなり、赤ちゃんが回ろうとしても回れない。
この悪循環に陥っている妊婦さんがとても多いのです。
逆子体操も大切ですが、痛みを我慢して必死にやるよりも、「お風呂にゆっくり入って体を温める」「好きな音楽を聴いてボーッとする」ことの方が、副交感神経を優位にし、子宮をふわふわに緩める効果があります。

逆子に関するよくある質問(FAQ)
最後に、私のマタニティクラスでよく受ける質問にお答えします。
Q. 逆子体操はお腹が張っても続けるべきですか?
A. いいえ、お腹が張るなら休みましょう。
逆子体操(胸膝位など)は、お腹が張りやすい姿勢でもあります。張っている状態では赤ちゃんは回れません。体操中に張りや痛みを感じたらすぐに中止し、横になってリラックスすることを優先してください。
Q. 寝る向きは「左下」と「右下」、どっちがいいですか?
A. 基本は医師の指示通りですが、寝苦しければ楽な姿勢でOKです。
一般的には赤ちゃんの背中がある方を上にして寝ると回りやすいと言われますが、一晩中同じ姿勢でいるのはストレスですよね。ママが熟睡できることが一番の薬です。抱き枕などを使って、自分が一番楽だと感じる姿勢で寝てください。
Q. 治った瞬間に「回った!」と分かりますか?
A. 分かる人もいますが、気づかない人も多いです。
「グルン!と大きな地震のような衝撃があった」という方もいれば、「朝起きたらなんとなくお腹の形が変わっていた」「検診に行ったら治っていた」という方も非常に多いです。衝撃がないからといって、治っていないとは限りませんよ。
まとめ:今日は「確認」をお休みして、ゆっくり眠りましょう
逆子かどうかを自分で知るためのポイントを整理します。
- 胎動の位置: 「膀胱キック」が減り、「肋骨キック」が増えたら治ったサインかも。
- セルフチェック: お腹を強く押す「触診」は危険なので絶対NG。
- 32週の過ごし方: まだ回る可能性は十分ある。「焦り」を手放し、お腹を緩めることが一番の近道。
32週の今、あなたが赤ちゃんのためにできる最高のこと。それは、必死に体操することでも、ネットで検索し続けることでもなく、「ママが笑顔でリラックスすること」です。
今日はお腹を触って確認するのはお休みにして、「こっちが頭だよ?、回っておいで?」と優しく声をかけながら、ゆっくり眠りにつきましょう。次の検診で、嬉しい報告が聞けることを心から祈っています。