健康診断で血圧や心臓への注意を受け、さらに夜遅くの食事で胃もたれも感じるようになった50代。
「寝る向きを変えるだけで、少しでも内臓の負担を減らせないか?」と考え、ネットで検索してみたものの、「心臓には右が良い」「逆流性食道炎には左が良い」と真逆の情報が出てきて、結局どっちを向けばいいのか迷っていませんか?
結論からお伝えします。心臓への負担を減らし、消化を助けたいなら「右下」が基本です。しかし、胸焼け(逆流感)がある時だけは「左下」が正解になります。
この記事では、循環器内科専門医の視点から、心臓と胃腸の両方をケアするための「症状別・寝る向き使い分けメソッド」を解説します。読み終える頃には、その日の体調に合わせて最適な向きを選び、安心して眠りにつけるようになりますよ。
[著者・監修者情報]
著者:西島 健太郎(にしじま けんたろう)
元循環器内科専門医 / 総合内科専門医。地域の中核病院で救急医療に従事した後、現在は生活習慣病の予防医療に注力。「心臓と胃腸は繋がっている」という視点から、50代の働き盛りが抱える複合的な不調に対し、実践的な生活指導を行っている。
監修:日本循環器学会 ガイドライン準拠
本記事は、日本循環器学会および日本心不全学会のガイドラインに基づき、医学的エビデンスに準拠して執筆されています。
なぜ「右下」が心臓と消化に良いのか?解剖学で見る2つのメリット
「右を下にして寝ると体に良い」という説には、解剖学的な明確な理由が2つあります。
まず1つ目は、心臓への負担軽減です。
心臓は胸の左側に位置しています。そのため、右を下にして寝ると心臓が上に来る形になり、重力による圧迫を受けにくくなります。さらに、全身から心臓へ戻る太い血管(下大静脈)は体の右側を通っているため、右下寝はこの血液の戻り(静脈還流)をスムーズにし、心臓が血液を送り出すポンプ機能を助けるのです。心不全の患者さんが、無意識に右下を好むことが多いのはこのためです。
2つ目は、消化の促進です。
胃の出口である幽門(ゆうもん)は、体の右側にあります。右を下に向けると、胃の中の食べ物が重力に従ってスムーズに十二指腸へと流れ出ます。食べてすぐ寝てしまった時や、胃もたれを感じる時に右下が推奨されるのは、この「胃の形」によるものです。

【実践】今夜はどっち?症状別・寝る向き使い分け「ハイブリッド・メソッド」
では、常に右下で寝れば良いのでしょうか? 実はそうではありません。右下寝には「胃酸が逆流しやすい」という弱点があるからです。
そこで提案したいのが、症状とタイミングで向きを変える「ハイブリッド寝姿勢メソッド」です。

基本的には「右下」で休み、心臓と胃の負担を減らしてリラックス(副交感神経優位)を狙います。しかし、もし夜中に胸焼けで目が覚めたら、その時は迷わず「左下」に変えてください。左下は胃の入り口(噴門)が上に来るため、物理的に逆流を止める最強の姿勢になります。
右下寝の注意点:逆流性食道炎のリスクと「抱き枕」の活用法
右下寝を快適に続けるためには、2つの工夫が必要です。
- 上半身を少し高くする:
右下は消化が良い反面、胃の入り口が下になるため、胃酸が逆流しやすくなります。枕の下にタオルを入れるなどして、上半身全体を10〜15度ほど高くすると、重力で逆流を防げます。 - 抱き枕を使う:
ずっと同じ向きで寝ていると、下になった右肩や腰に負担がかかります。抱き枕を抱えて寝ることで体圧が分散され、長時間の右下寝でも体が痛くなりにくくなります。
FAQ:寝返りは打っていい?高血圧に良いのは?専門医が回答
Q:寝ている間に向きが変わってしまったらどうすればいいですか?
A:気にしなくて大丈夫です。 寝返りは血液循環を促し、体温調節をするための重要な生理現象です。無理に固定する必要はありません。「入眠時の姿勢」を意識するだけで十分効果はあります。
Q:高血圧なのですが、どっちが良いですか?
A:右下がおすすめです。 右側臥位は副交感神経(リラックス神経)が優位になりやすく、血圧や心拍数が安定しやすいという研究報告があります。ただし、いびきや無呼吸がある場合は、向きに関わらず「横向き」を維持することが最優先です。
まとめ:体調に合わせて向きを変える。それが大人の賢い健康管理です
心臓も胃も気になるお年頃。一つの正解に縛られる必要はありません。
- 基本は「右下」。心臓を休め、消化を助ける。
- 胸焼けがしたら「左下」。逆流を物理的に止める。
- 抱き枕と少しの傾斜で、右下の弱点をカバーする。
今夜はまず、右を下にしてリラックスしてみましょう。あなたの体が「楽だ」と感じる向きが、今のあなたにとっての正解です。
おやすみなさい。
[参考文献リスト]
- 心不全手帳(生活指導) - 日本心不全学会
- 消化器の構造と機能 - MSDマニュアル家庭版
- Autonomic Neuroscience: 寝姿勢と自律神経