👤 著者プロフィール
家電の目利き・テツヤ(家電量販店 元フロア長 / ジェネリック家電アナリスト)
「ブランド料を払うな、中身を見ろ」を信条とする、コスパ重視の元家電量販店員。メーカーの宣伝文句ではなく、部品や開発体制から品質をジャッジする。特に「ジェネリック家電」の構造分析に強く、安くて良いものを見抜く目利きに定評がある。
引っ越しや買い替えで新しい洗濯機を探しているあなた。
ネットで「アイリスオーヤマ 洗濯機」と検索した瞬間、サジェストに「買ってはいけない」という不穏な言葉が出てきて、手が止まってしまいませんでしたか?
「やっぱり安いには理由があるのか……」
「すぐに壊れたらどうしよう……」
その不安、痛いほどよく分かります。10万円以上する大手メーカー製と比べて、アイリスオーヤマは半額以下。安すぎて逆に怖いと感じるのは、消費者として正常な感覚です。
しかし、元家電量販店員の私から見れば、アイリスオーヤマは「買ってはいけない」どころか、条件さえ合えば「最強の選択肢」です。
重要なのは、「何を妥協して、何を得るか」を知ること。
この記事では、アイリスオーヤマの洗濯機がなぜ安いのか、その「中身」と「妥協点」をプロの視点で包み隠さず解説します。
「すぐ壊れる」は本当か?中身を作っているのは「元・大手メーカー」の技術者たち
まず、一番の懸念である「壊れやすいのではないか?」という点についてお話しします。
結論から言うと、アイリスオーヤマの洗濯機は、決して「安かろう悪かろう」ではありません。
なぜそう言い切れるのか? それは、開発している「人」に理由があります。
実は、アイリスオーヤマの家電開発部門には、パナソニックやシャープ、東芝といった大手電機メーカーを早期退職したベテラン技術者たちが大量に在籍しています。
彼らは、長年培った技術とノウハウを持っていますが、大企業ではコストやしがらみで実現できなかった「本当にユーザーが欲しい機能」を、アイリスオーヤマという新天地で形にしているのです。

つまり、アイリスオーヤマの洗濯機の中身は、「一昔前の大手メーカーの技術」がベースになっています。最先端ではありませんが、長年使われてきた「枯れた技術」だからこそ、基本性能はしっかりしており、信頼性は決して低くないのです。
なぜこんなに安い?アイリスオーヤマが「あえて捨てた」3つの機能
では、なぜ大手メーカーより圧倒的に安いのでしょうか?
それは、技術者が「多くの人にとって不要な機能」を徹底的に削ぎ落としたからです。
アイリスオーヤマが「あえて捨てた」主な機能は以下の3つです。
- スマホ連携(IoT機能): 外出先から操作できる機能。便利ですが、実際に毎日使う人は稀です。
- 過剰なデザイン: 高級感のあるガラスドアやタッチパネル。洗濯機は脱衣所に置くものなので、シンプルで十分です。
- 独自の洗浄ギミック: 「泡洗浄」や「ナイアガラ洗浄」のような各社独自の複雑な機構。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 正直に胸に手を当てて考えてみてください。「スマホで洗濯機を操作したいですか?」
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、カタログスペックの多さに惹かれて高額なモデルを買ってしまいがちだからです。しかし、実際に使うのは「電源」「スタート」ボタンだけ。アイリスオーヤマは、そういった「使わない機能」に数万円を払わせることを良しとしません。その代わり、「洗剤自動投入」や「温水洗浄」といった、本当に家事が楽になる機能はしっかり搭載しています。この潔い取捨選択こそが、安さの正体なのです。
【ドラム式】買う前に知っておくべき「乾燥機能」の妥協点
ここからは、具体的な選び方の注意点です。まずは人気の「ドラム式洗濯機」から。
アイリスオーヤマのドラム式は10万円前後と破格ですが、一つだけ大きな妥協点があります。
それは、「乾燥方式」です。
📊乾燥方式の比較(ヒーター式 vs ヒートポンプ式)
| 項目 | アイリスオーヤマ(主にヒーター式) | 大手上位機種(ヒートポンプ式) |
|---|---|---|
| 仕組み | ドライヤーの熱風で乾かす | 除湿機のように乾かす |
| 本体価格 | 安い(約10万円〜) | 高い(約20万円〜) |
| 電気代 | 高い | 安い |
| 衣類への影響 | 高温で縮みやすい | 低温で優しい |
| こんな人向け | 乾燥はたまに使う / 部屋干しメイン | 毎日乾燥までフル活用したい |
アイリスオーヤマのドラム式は、主に「ヒーター式」を採用しています。ドライヤーで乾かすようなものなので、電気代がかかり、衣類が縮みやすいというデメリットがあります。
もしあなたが「毎日乾燥機能を使って、タオルをふわふわにしたい」なら、高くても大手メーカーのヒートポンプ式を買うべきです。
逆に、「基本は部屋干しで、雨の日だけ乾燥を使いたい」というスタイルなら、アイリスオーヤマで十分満足できます。
【縦型】「うるさい」を回避するために確認すべき「インバーター」の有無
次に「縦型洗濯機」です。
口コミでよく見る「音がうるさい」という評判。これを回避するために確認すべきスペックが「インバーター搭載」かどうかです。
インバーターとは、モーターの回転数を制御する装置のこと。これがないと、モーターが常に全力回転するため、脱水時の音が大きくなり、電気代もかかります。
アイリスオーヤマの最安価格帯のモデルには、このインバーターが非搭載のものがあります。
- 一人暮らしで夜に洗濯する人
- アパートの壁が薄い人
これらに当てはまるなら、数千円高くても必ず「インバーター搭載モデル」を選んでください。 ここをケチると、騒音トラブルで後悔することになります。
結論:あなたは買うべき?タイプ別おすすめ診断
最後に、あなたがアイリスオーヤマの洗濯機を買うべきかどうか、タイプ別に診断します。
- 【買うべき人】
- コスパ最優先で、浮いたお金を他のことに使いたい。
- 「洗剤自動投入」などの便利機能は欲しい。
- 乾燥機能は「たまに使う」程度。
- ブランド名にはこだわらない。
- 【やめるべき人】
- 最新のIoT機能やAI機能が好き。
- 毎日乾燥機能を使って、家事を完全自動化したい。
- 音に敏感で、図書館並みの静かさを求める。
もし「買うべき人」に当てはまったなら、自信を持って購入してください。
そして、浮いたお金で「5年延長保証」に入ることを強くおすすめします。本体が安い分、保証をつけても大手メーカーより断然安いですし、万が一の故障リスクもゼロにできます。
ブランド料を払うのはもう終わり。賢い選択で生活を豊かにしよう
アイリスオーヤマの洗濯機を選ぶことは、「妥協」ではありません。
自分に必要な機能を見極め、不要なものにお金を払わないという「賢い選択」です。
10万円浮いたら、何ができるでしょうか?
美味しいものを食べたり、旅行に行ったり、あるいは乾燥機を別に買ったりすることもできます。
ブランド料にお金を払う時代は終わりました。
中身のしっかりした「ジェネリック家電」を選んで、賢く豊かな生活を手に入れましょう。