広告 健康

ごぼう茶を「飲んではいけない人」とは?ブタクサ花粉症と腎臓病のリスクを管理栄養士が解説

著者: 健康茶ソムリエ・和子(管理栄養士)
更新日: 2025年12月24日


「健康診断の結果を見て、そろそろ何か体にいいことを始めなきゃ……」
そう思って、テレビや雑誌で話題の「ごぼう茶」を手に取ろうとしていませんか?

でも、ちょっと待ってください。その「健康によさそう」という直感だけで飲み始めると、あなたやご家族にとっては、かえって逆効果になってしまうかもしれません。

「せっかく健康のために飲むお茶で、逆に体を壊すなんて絶対に避けたい」
「私が花粉症で、夫が腎臓を気にしているけれど、本当に飲んでも大丈夫?」

もし今、このような不安を感じて検索されたのであれば、その「慎重さ」は大正解です。管理栄養士として断言しますが、ごぼう茶は万人に合うお茶ではなく、明確に「人を選ぶお茶」だからです。

この記事では、ごぼう茶を「飲んではいけない人」の条件を、医学的なメカニズムに基づいて包み隠さず解説します。特にキク科アレルギー(ブタクサ花粉症)の方と、腎臓の数値が気になる方にとっては、命に関わる重要な情報です。

「飲まない」という選択も、立派な健康管理の一つ。
あなたとご家族の体を守るための「やめどきサイン」を、一緒に確認していきましょう。


【アレルギー】秋に目がかゆくなる人は注意。「ブタクサ花粉症」との意外な関係

「ごぼう」と「花粉症」。一見なんの関係もないように思えますが、実は植物学的には非常に近い関係にあります。

結論から申し上げますと、秋に花粉症(ブタクサ、ヨモギ)の症状が出る方は、ごぼう茶を飲む際に細心の注意が必要、あるいは避けるべきです。

なぜ「ごぼう茶」でアレルギー反応が出るのか?

これは「交差反応(クロスリアクション)」と呼ばれる現象です。
ごぼうは「キク科」の植物です。そして、秋の花粉症の主な原因であるブタクサやヨモギも、同じ「キク科」の植物なのです。

これらの植物は、アレルギーの原因となるタンパク質の構造が非常によく似ています。そのため、体が「あ、これは花粉だ!」と勘違いしてしまい、お茶として飲んだ場合でもアレルギー反応を引き起こすことがあるのです。これを口腔アレルギー症候群(OAS)と呼びます。

あなたは大丈夫?「飲んではいけない」チェックリスト

以下の項目に一つでも当てはまる場合は、ごぼう茶の摂取を控えるか、医師に相談することをお勧めします。

  • [ ] 秋(8月〜10月頃)になると、目のかゆみや鼻水が出る(ブタクサ・ヨモギ花粉症の可能性)
  • [ ] キク科の野菜(春菊、レタスなど)を食べて、口がイガイガしたことがある
  • [ ] 過去にメロンやスイカを食べて、喉が痒くなったことがある(ウリ科ですが、交差反応を起こしやすい体質の可能性があります)
  • [ ] 重篤なアレルギー体質(アナフィラキシー歴)がある

口腔アレルギー症候群(OAS)は、花粉症の患者が、その花粉と共通抗原性を持つ果物や野菜を摂取した直後に、口唇、口腔、咽頭粘膜にかゆみ、ピリピリ感、腫脹などを来す症候群である。

出典: 食物アレルギーの診療の手引き2020 - 日本小児アレルギー学会

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 一口飲んで「喉がイガイガする」「唇がピリつく」と感じたら、「気のせいかな?」と思わず、直ちに飲むのをやめてください。

なぜなら、アレルギー反応は回数を重ねるごとに重症化する恐れがあるからです。「健康にいいから」と我慢して飲み続けるのが一番危険です。体からの「NO」のサインを見逃さないでくださいね。


【腎臓病】カリウム制限中でも飲める?「抽出液」と「茶殻」の決定的な違い

次に、ご主人のように「腎臓の数値」を気にされている方への注意点です。
腎臓病の方、あるいは人工透析を受けている方にとって、カリウムの摂取制限は非常にシビアな問題ですよね。

ここで重要なのが、「ごぼう茶の飲み方」です。
ごぼう茶の抽出液(お茶そのもの)と、茶殻(出がらし)では、カリウムのリスクが天と地ほど違います。

「茶殻ごと食べる」は腎臓病の方にはNGです

最近の健康ブームで「ごぼう茶の茶殻も料理に使って食べましょう」という提案をよく見かけます。食物繊維が無駄なく摂れる素晴らしい方法ですが、カリウム制限がある方にとっては、これは危険な行為になり得ます。

ごぼうは根菜類の中でもカリウムが比較的多い野菜です。お湯で煮出した「お茶(抽出液)」には、カリウムはそこまで多く溶け出しませんが、「茶殻」そのものにはカリウムが残っています。

以下の比較表を見て、その違いを確認しましょう。

📊 腎臓への負担が変わる!カリウム含有量の比較(目安)

項目カリウム含有量 (100gあたり)腎臓へのリスク備考
ごぼう茶(抽出液)約 6〜10 mg麦茶と同程度で比較的安心。
ごぼう(ゆで・可食部)約 200〜300 mg茶殻を食べる場合はこれに近い値を摂取することになります。
麦茶(抽出液)6 mg最も腎臓に優しい選択肢の一つ。
玉露(抽出液)340 mg極めて高カリウム制限中は避けるべき代表格。

参考データ: 日本食品標準成分表2020年版(八訂) - 文部科学省

このように、抽出液として飲む分には、ごぼう茶のカリウムは麦茶と変わらない低いレベルです。しかし、茶殻を食べてしまうと、野菜のごぼうを食べているのと変わらない量のカリウムを摂取することになります。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 腎臓に不安がある方がごぼう茶を楽しむなら、「薄めに煮出して、お茶だけを飲む(茶殻は食べない)」ことを徹底してください。

なぜなら、カリウムは水に溶け出す性質がありますが、すべてが溶け出るわけではないからです。ご主人の数値を守るためにも、「もったいないから茶殻も食べる」は、健康なご家族だけにしておきましょう。もちろん、主治医から厳格なカリウム制限(例: 1日1500mg以下など)を指示されている場合は、必ず医師に相談してからにしてくださいね。


【胃腸・その他】お腹が弱い人や妊娠中の方が知っておくべきこと

アレルギーや腎臓病以外にも、体質によっては注意が必要なケースがあります。

1. お腹が緩くなりやすい人

ごぼう茶に含まれる「イヌリン」は水溶性食物繊維の一種で、腸内環境を整える素晴らしい成分です。しかし、胃腸が敏感な方が一度に大量に摂取すると、お腹が緩くなったり、ガスが溜まってお腹が張ったりすることがあります。
「便秘解消のために飲んだのに、逆にお腹が痛くなった」という場合は、濃度を薄くするか、飲む量を減らして様子を見てください。

2. 妊娠中・授乳中の方

ごぼう茶はノンカフェインなので、妊婦さんにも人気があります。基本的には問題ありませんが、ごぼうに含まれる「サポニン」やポリフェノールには強い抗酸化作用があります。
通常の食品として摂取する分には安全とされていますが、サプリメントのように濃縮されたものを過剰摂取したり、体調が不安定な時期に無理に飲んだりすることは避けましょう。心配な場合は、検診の際に産婦人科医に「ごぼう茶を飲んでも良いか」と一言確認すると安心です。


もし「飲めない」と分かったら?リスクゼロで健康になれる「代替茶」リスト

ここまで読んで、「私(または夫)には合わないかもしれない……」と落ち込んでしまった方もいるかもしれません。

でも、安心してください。ごぼう茶を飲まないことが、健康への近道になる場合もあるのです。
無理をしてリスクのあるお茶を飲むよりも、あなたの体質に合った「安全なお茶」を選ぶことこそが、本当の意味での「健康管理」です。

ごぼう茶の代わりになり、かつアレルギーや腎臓への負担が少ないおすすめのお茶をご紹介します。

1. 麦茶(むぎちゃ)

  • おすすめ理由: カリウムが少なく(100mlあたり約6mg)、ノンカフェイン。キク科アレルギーとの交差反応のリスクも極めて低いです。
  • こんな人に: 腎臓をいたわりたい方、家族みんなでガブガブ飲みたい方。
  • 専門家メモ: 「なんだ、普通の麦茶か」と侮るなかれ。血液をサラサラにするピラジンという成分が含まれており、日常の水分補給としては最強のパートナーです。

2. 黒豆茶(くろまめちゃ)

  • おすすめ理由: 大豆イソフラボンやアントシアニンが含まれ、アンチエイジング効果が期待できます。香ばしい風味はごぼう茶好きの方にも満足度が高いです。
  • 注意点: 大豆アレルギーの方は避けてください。カリウムはごぼう茶(抽出液)よりやや高めの場合があるため、腎臓病の方は飲み過ぎに注意が必要です。

3. なたまめ茶

  • おすすめ理由: 「膿を出すお茶」として古くから親しまれています。口臭予防や鼻のグズグズ対策として、花粉症の時期に人気があります。
  • こんな人に: アレルギー体質で、スッキリしたい方。

まとめ:健康のために「飲まない」選択も正解です

ごぼう茶は、食物繊維やポリフェノールが豊富な素晴らしい飲み物ですが、「誰にとっても万能薬」ではありません。

  • ブタクサ花粉症(キク科アレルギー)があるなら、避けるのが賢明。
  • 腎臓病の不安があるなら、茶殻は食べず、抽出液のみを適量楽しむ。
  • 少しでも違和感を感じたら、すぐに麦茶などの代替茶に切り替える。

「テレビでいいと言っていたから」という理由だけで、不安を感じながら飲み続ける必要は全くありません。
ご自身の体質、そしてご主人の検査数値を守るために「あえて飲まない」と決めること。それもまた、家族を想う立派な健康管理です。

もし、まだ判断に迷うようであれば、次回の診察時にこの記事のチェックリストや数値を医師に見せて相談してみてください。
あなたとご家族が、心から安心して飲める「一杯」に出会えることを願っています。


参考文献・出典

-健康