生後5ヶ月、ようやく寝返りができるようになった我が子。成長を喜んだのも束の間、夜中にふと見るとうつ伏せでスヤスヤ……。
「SIDS(乳幼児突然死症候群)が怖いから戻さなきゃ」と仰向けにすると、ギャン泣きして起きてしまう。そんな夜を繰り返して、香織さんも限界を迎えていませんか?
「うつ伏せの方がよく寝るみたいだけど、本当にダメなの?」「自分で寝返りできるなら、そのままでもいいんじゃない?」
そんな葛藤を抱えるママへ、助産師として結論をお伝えします。
赤ちゃんが自力で仰向けに戻れるなら、夜中に無理に戻す必要はありません。
ただし、それには「絶対に守るべき環境の条件」があります。
この記事では、なぜ赤ちゃんはうつ伏せを好むのかという理由と、窒息事故をゼロにするための「寝床の断捨離リスト」を解説します。正しい知識で環境を整えれば、ママも安心して眠れるようになりますよ。
[著者・監修者情報]
著者:佐藤 恵(さとう めぐみ)
助産師 / 小児睡眠コンサルタント。臨床経験15年。新生児訪問や育児相談で3,000組以上の親子の睡眠環境を指導。「ママも寝ていいんです」を合言葉に、医学的根拠に基づいた安全な見守り方を提案している。
監修:厚生労働省・米国小児科学会 ガイドライン準拠
本記事は、厚生労働省「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」および米国小児科学会(AAP)の安全な睡眠環境ガイドラインに基づき、医学的妥当性を確認して執筆されています。
なぜうつ伏せだとよく寝るの?赤ちゃんが安心する3つの理由
「どうしてわざわざ危ない姿勢で寝るの?」と不思議に思うかもしれませんが、赤ちゃんにとってうつ伏せは、とても理にかなったリラックス姿勢なのです。主な理由は3つあります。
- 胎内環境の再現(安心感): お腹が床に密着して温まり、胸が適度に圧迫される感覚は、ママのお腹の中にいた時の状態に似ています。これが本能的な安心感を生み、深い眠りを誘います。
- モロー反射の抑制: 仰向けだと、ちょっとした音や刺激で手足がビクッとなる「モロー反射」が起き、自分で自分を驚かせて起きてしまうことがあります。うつ伏せなら手が床に固定されるため、この反射が起きにくくなります。
- お腹の不快感の解消: 授乳後のガスが溜まっている時など、うつ伏せになることでお腹が圧迫され、ガスが抜けやすくなり、苦しさが和らぐことがあります。
つまり、赤ちゃんは「苦しいから」ではなく、「心地よいから」うつ伏せを選んでいるのです。
「戻さなくていい」の境界線。厚生労働省も認める安全基準とは?
では、いつから「戻さなくていい」のでしょうか?
厚生労働省や米国小児科学会(AAP)のガイドラインでは、明確な基準が示されています。
それは、「寝返り(仰向け→うつ伏せ)」と「寝返り帰り(うつ伏せ→仰向け)」の両方が、自力でスムーズにできることです。
この「寝返り帰り」ができる運動能力があれば、万が一苦しくなっても自分で顔の向きを変えたり、仰向けに戻ったりして窒息を回避できる可能性が高いため、夜中に親が起きて体位を戻す必要はないとされています。
ただし、重要なルールが一つあります。
「寝かしつけのスタートは、必ず仰向けで行うこと」です。最初からうつ伏せで寝かせることは、SIDSのリスクを高めるため推奨されていません。あくまで「寝ている間に自分で動いた場合」に限った話です。
【実践】窒息リスクをゼロにする「寝床の断捨離リスト」
「戻さなくていい」と言えるのは、寝床が安全であることが大前提です。実は、うつ伏せ寝のリスクの多くは、SIDSそのものよりも、寝具による「窒息」にあります。
今すぐ寝室に行って、以下のものが赤ちゃんの周りにないかチェックしてください。一つでもあれば、即刻「断捨離(撤去)」が必要です。

【撤去リスト】
- 枕: 赤ちゃんに枕は不要です。顔が埋まる最大の原因です。
- ぬいぐるみ・クッション: 可愛いですが、寝床には凶器です。
- 掛け布団・タオルケット: 蹴飛ばして顔にかかる恐れがあります。保温は「スリーパー(着る布団)」で調整しましょう。
- 柔らかい敷布団: 大人が手をついて沈み込むような柔らかさはNGです。高反発のベビー用マットレスを使用してください。
FAQ:うつ伏せ寝防止グッズは必要?お昼寝ならOK?
Q:うつ伏せ寝防止のクッションやベルトは使った方がいいですか?
A:あまりおすすめしません。 寝返りの力が強いと、クッションを乗り越えて変な体勢で挟まったり、ベルトが外れて巻きついたりする事故のリスクがあるからです。グッズで固定するよりも、「万が一うつ伏せになっても窒息しない環境(硬いマット+何もない状態)」を作ることの方が、確実な安全対策になります。
Q:お昼寝の時なら、うつ伏せでも大丈夫ですか?
A:大人の目が常に届くならOKです。 ただし、親も一緒に寝てしまう場合や、別室で家事をする場合は、夜と同じく「仰向けスタート+安全な環境」を徹底してください。SIDSや窒息は昼夜を問いません。
まとめ:ママの安眠も大切。安全な環境を作って、今日はゆっくり休みましょう
夜中の見守り、本当にお疲れ様でした。
香織さんがこれまで何度も仰向けに戻してきたのは、それだけ赤ちゃんを大切に想っている証拠です。
- 赤ちゃんがうつ伏せを好むのは、安心できるから。
- 「寝返り帰り」ができれば、無理に戻さなくていい。
- 枕や柔らかい布団を撤去し、窒息リスクをゼロにする。
この3つが揃えば、もう夜中に飛び起きる必要はありません。
今すぐ寝床をチェックして、顔の周りに何もないことを確認したら、今夜は赤ちゃんの生命力を信じて、香織さんもゆっくり休んでくださいね。
ママが笑顔でいることが、赤ちゃんにとっても一番の安心材料になります。
[参考文献リスト]
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)について - 厚生労働省
- Safe Sleep - 米国小児科学会 (AAP)