著者情報:くるまの賢者・タカ
元ディーラー営業責任者。スズキとマツダの両陣営で現場指揮を執った経験を持ち、OEM車の商談実務とリセールバリューの裏側に精通。現在は中立的な立場から、ユーザーが「トータルコスト」で得をするための自動車購入戦略をアドバイスしている。
迷うのは当然です。親御さんや知人から「マツダにも同じ車(フレアワゴン)があるよ」と勧められたものの、本家スズキのスペーシアと何が違うのか、マツダで買うと将来の下取りで損をするのではないか……。そんな不安を抱えて、送信ボタンを押す前に手が止まってしまっていませんか?
結論から申し上げます。マツダのフレアワゴンとスズキのスペーシアは、中身は100%同じ車です。 性能や燃費、安全装備で損をすることはありません。
ただし、唯一にして最大の「違い」はお金の動きにあります。この記事では、自動車業界の裏側を知る私だからこそお伝えできる、3年後のリセール差額「約8万円」を逆転させ、マツダで賢く買うための損益分岐点と商談術を公開します。
【結論】中身は100%スズキ製。エンブレム以外に「違い」はない
まず、健一さんが最も心配されている「性能の差」についてお答えします。マツダのフレアワゴンは、スズキから供給を受けているOEM(相手先ブランド名製造)車であり、製造ラインもパーツもスペーシアと全く同一です。
具体的には、以下の主要ユニットはすべてスズキ製です。
- エンジン・変速機: 燃費性能を支えるマイルドハイブリッドシステムを含め、スズキの最新技術がそのまま搭載されています。
- 安全装備: 「スズキ セーフティ サポート」が、マツダでは名称こそ変わりますが、センサーや制御ソフトの中身は同じです。
- 車体構造: 軽スーパーハイトワゴンとしての広さや使い勝手も、ミリ単位で共通しています。
唯一の物理的な違いは、ハンドルの中心や車体前後にある「エンブレム」と、車名ロゴの形状だけです。

H2-2: リセールバリューの「5%の壁」。マツダ版は将来いくら安くなる?
性能は同じでも、将来車を手放す時の「査定額」には明確な差が出ます。これが、健一さんが直面する「OEM車の不都合な真実」です。
中古車市場では、本家であるスズキ スペーシアの方がブランド認知度が高いため、マツダ フレアワゴンよりもリセールバリュー(再販価値)が高くなる傾向にあります。
具体的にどれくらいの差が出るのか、統計データに基づいた予測を見てみましょう。
📊3年後・5年後の予想残価率と査定額の差
| 保有期間 | スペーシア(本家) | フレアワゴン(OEM) | 査定額の差(目安) |
|---|---|---|---|
| 3年後(車検時) | 62% | 57% | 約 8.5 万円 |
| 5年後(2回目車検) | 48% | 42% | 約 10.2 万円 |
この「約8万円〜10万円」という差額が、健一さんがマツダで買う際に覚悟すべき、あるいは商談で取り返すべき金額です。
逆転の商談術:マツダで「スペーシアより得」をするための条件
「リセールが低いなら、やっぱりスズキで買ったほうがいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、ここからが営業職である健一さんにこそ知ってほしい逆転のロジックです。
マツダのディーラーにとって、フレアワゴンは「スズキから仕入れて売る車」です。自社製造ではない分、利益率は低いのですが、それ以上に「マツダの顧客(健一さんの知人やご家族)を他社に逃がさないこと」を最優先します。
特に「紹介」という強力な武器がある場合、マツダはリセールバリューの低さを補って余りある「値引きの上乗せ」を提示してくる可能性が非常に高いのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「リセールで損をする分を、今、現金(値引き)で回収する」というスタンスで商談に臨んでください。
なぜなら、マツダの営業マンも「将来の下取りがスズキより少し弱いこと」は百も承知だからです。そこを突いて、「スペーシアの見積もりより総額で10万円安くなるなら、紹介してくれた人の顔を立ててマツダで決めます」と伝えるのが、最もスマートで効果的な交渉術です。
この戦略で「スペーシア+10万円」の値引きを引き出せれば、将来の査定差額を今この瞬間に相殺したことになり、トータルコストではフレアワゴンの方が「得」になります。
マツダの整備士に任せて大丈夫?アフターサービスの「裏側」
最後に、購入後のメンテナンスについて。マツダの看板を掲げたお店で、スズキの車を完璧に整備できるのかという不安を解消しましょう。
結論から言えば、全く問題ありません。
マツダディーラーは、フレアワゴン(スズキ車)を診断するための専用コンピューターを完備しており、パーツ供給ルートもスズキと直結しています。
むしろ、マツダで買うことには以下のメリットがあります。
- 顧客対応の質: 一般的にマツダは「マツダ・プレミアム」を掲げ、店舗の高級感や接客の質を向上させています。スズキの軽自動車を、マツダの高級SUVと同じ手厚いサービスで維持できるのは、OEMオーナーだけの特権です。
- 紹介者のメンツ: 紹介してくれた知人や親御さんと同じ店舗に通うことで、ディーラー側も「佐藤さんの紹介だから」と、より丁寧な対応やサービスを心がけるようになります。
まとめ
マツダ フレアワゴンとスズキ スペーシア。どちらを選んでも、車としての性能に間違いはありません。
- 性能: 100%同じ。スズキの最新技術をマツダで乗れる。
- 損益分岐点: 将来の査定差額「約8万円」を、購入時の値引きで回収できるか。
- 安心感: マツダの整備体制は万全。紹介の縁を大切にするメリットは大きい。
健一さん、紹介してくれた方の顔を立てつつ、経済的にも合理的な選択をする準備は整いました。
納得のいく1台を手に入れるために、マツダ店に行く前に、まずはスズキでスペーシアの見積もりを取ってください。 その数字こそが、マツダで「最高の条件」を引き出すための、唯一にして最強の武器になります。
【参考文献リスト】
- マツダ フレアワゴン 公式サイト(主要諸元表) - マツダ株式会社
- スズキ スペーシア 公式サイト - スズキ株式会社
- ベストカーWeb:OEM車の損得勘定 - 講談社ビーシー, 2023年公開
- 中古車市場統計データ(残価率推移) - 株式会社リクルート