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イランと日本はなぜ仲が良い?歴史と外交関係をわかりやすく解説!今も続く日本独自の「信頼のパイプ」


👤 著者プロフィール

高橋 誠(国際ジャーナリスト・中東情勢アナリスト)

大手新聞社のテヘラン支局長を歴任し、中東情勢の最前線で取材を続ける。「歴史を知れば、ニュースがもっと面白くなる」をモットーに、複雑な国際関係を人間ドラマとして紐解く。著書に『中東の親日国』など。

ニュースで中東情勢が報じられるたび、不思議に思ったことはありませんか?
「イランは反米国家だ」と繰り返される一方で、「実はイランは世界有数の親日国だ」という話も耳にする。

「アメリカと敵対しているのに、なぜその同盟国である日本とは仲が良いのか?」

このギャップには、多くの日本人が知らない、ある一つの「伝説の事件」が関係しています。
それは今から70年前、世界中がイランを見捨てた時、たった一隻で英国艦隊に立ち向かった日本のタンカーの物語です。

今日は、教科書には載っていない熱き男たちのドラマと、板挟みの中で日本が貫いてきた独自の外交姿勢についてお話ししましょう。これを読めば、明日のニュースが少し違って見えるはずです。


なぜイランは親日なのか? すべては1953年「日章丸事件」から始まった

イラン人の対日感情を決定づけた出来事。それが1953年の「日章丸(にっしょうまる)事件」です。

英国による石油独占と海上封鎖

当時、イランの石油利権はイギリスに独占されていました。これに反発したイランのモサデク首相は石油の国有化を宣言しますが、激怒したイギリスは軍艦を派遣し、ペルシャ湾を海上封鎖。「イランの石油を買った船は撃沈する」と世界を脅しました。
経済制裁により、イラン国民は貧困に喘ぎました。しかし、どの国もイギリスを恐れて手を差し伸べようとはしませんでした。

「イラン国民を見殺しにできない」

そんな中、立ち上がった日本人がいました。出光興産の創業者、出光佐三(いでみつ さぞう)です。
彼は「国際法上、イランの石油は自由だ。英国の横暴を許してはならない」と決断し、自社のタンカー「日章丸」を極秘にイランへ派遣しました。

命がけの航海と熱狂

日章丸は、英国海軍の包囲網をかいくぐり、見事にイランのアーバーダーン港に入港しました。
その姿を見たイラン国民の熱狂は凄まじいものでした。港には数万人が押し寄せ、「日本万歳!」「日章丸万歳!」と叫びながら、涙を流して歓迎したといいます。

この事件は、イラン人にとって単なるビジネスではありませんでした。アジアの小国が、大国イギリスのいじめに屈せず、自分たちを救いに来てくれた。その「義侠心」が、70年経った今も語り継がれる信頼の原点となっているのです。


視聴率90%超え! ドラマ『おしん』がイラン人の心を鷲掴みにした理由

政治的な絆に加え、文化的な側面でも日本とイランは深く結びついています。その象徴が、1980年代にイランで放送されたNHKドラマ『おしん』です。

街から人が消えた?

当時、イランでの『おしん』の最高視聴率は90%を超えたと言われています。「放送時間になると街から人が消える」「おしんの名前を知らないイラン人はいない」という逸話が残るほどの社会現象となりました。

なぜそこまで共感されたのか?

放送当時、イランはイラクとの戦争(イラン・イラク戦争)の真っ只中でした。毎日のように空爆があり、物資も不足する過酷な状況。
そんな中、どんなに辛くても歯を食いしばり、家族のために生き抜く「おしん」の姿に、イランの人々は自分たちを重ね合わせ、勇気をもらったのです。

イランには「忍耐」や「家族愛」を尊ぶ文化があり、日本人の精神性と非常に近いものがあります。この文化的共鳴が、親日感情をより強固なものにしました。


米国との板挟みの中で。日本が貫く「独自の外交姿勢」とは

歴史的にも文化的にも深い絆がある日本とイラン。しかし、現代の国際情勢は複雑です。
日本はアメリカの同盟国であり、アメリカがイランに制裁を科せば、それに同調せざるを得ない立場にあります。

独自の「仲介役」としての価値

それでも日本は、イランとの国交を断絶することなく、独自のパイプを維持し続けてきました。
例えば、トランプ政権下で米イラン関係が最悪化した際、当時の安倍晋三首相がイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師と会談を行いました。これは、アメリカの大統領には絶対にできないことです。

イラン側も、日本の立場(アメリカの同盟国であること)を十分に理解しています。その上で、「西側諸国の中で、唯一嘘をつかない信頼できる国」として、日本を特別なパートナーと見なしているのです。

この「独自の立ち位置」こそが、中東外交における日本の最大の武器であり、国際社会における日本の存在意義の一つと言えるでしょう。


ビジネスマンが知っておくべき、現在の日イラン関係

最後に、現在のビジネス環境についても触れておきましょう。

経済制裁の影響で、残念ながら日本はイランからの原油輸入を停止しています。多くの日本企業も撤退を余儀なくされました。
しかし、医薬品や医療機器などの人道物資の輸出は続いており、ソニーやパナソニック、トヨタといった日本ブランドへの信頼は依然として絶大です。

イランは人口8,000万人を超え、豊富な天然資源を持つ巨大市場です。もし将来、制裁が解除されれば、日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなることは間違いありません。その時のために、先人たちが築いた「信頼の貯金」を守り続けることが、今の私たちに求められています。


まとめ:先人の勇気が築いた資産を、次は私たちが受け継ぐ番だ

日章丸事件の勇気と、おしんの共感。
これらが積み重なって、今の「特別な友好関係」があります。

「反米のイランがなぜ親日なのか?」
その答えは、70年前の海の上で、命がけで信頼を勝ち取った日本人たちの物語の中にありました。

次の飲み会や商談で、もし中東の話題が出たら、ぜひこの話をしてみてください。それは単なる雑学ではなく、私たちが誇るべき日本の歴史そのものなのですから。


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