「週末のツーリング、最高気温は20度。これならメッシュジャケットでも大丈夫かな?」
「いや、前回それで寒くて震えたし……でも冬用ジャケットだと昼間暑そうだし……」
そんな風に、クローゼットの前でジャケット選びに迷っていませんか?
街中ならTシャツ一枚で過ごせる「20度」という気温。しかし、バイクの上では全く別の顔を見せます。
結論から言います。最高気温20度のツーリングで、メッシュジャケットを選ぶのはNGです。
正解は、「3シーズンジャケット」と、こまめな「脱ぎ着(レイヤリング)」の組み合わせ。
この記事では、元バイク用品店店長であり、日本一周も経験した私が、20度という微妙な気温を快適に走り抜けるための「失敗しない装備選び」と「調整テクニック」を伝授します。
[著者情報]
高橋 剛(たかはし つよし)
バイクライフアドバイザー / 元バイク用品店店長。バイク歴20年。
「寒さは気合ではなく装備で解決する」をモットーに、初心者が陥りやすい失敗を防ぐための現実的なアドバイスを発信。安全運転講習の指導経験もあり、快適性と安全性の両立に定評がある。
「20度=暖かい」は罠!走行風で体感温度は「10度以下」になる現実
まず、バイクにおける「気温」の考え方をアップデートしましょう。
天気予報の「20度」は、あくまで静止状態での気温です。バイクで走り出すと、そこに「走行風」という強烈な冷却要素が加わります。
体感温度を計算する簡易式(ミスナールの計算式など)で考えると、時速60kmで走行した場合、体感温度は約14度まで下がります。
さらに高速道路で時速100kmを出せば、体感温度は10度前後。これはもう「冬」の寒さです。
もしあなたがメッシュジャケット(風を通す素材)を着ていたらどうなるでしょうか?
体温は風に奪われ続け、あっという間に低体温症に近い状態になり、判断力が鈍って事故のリスクさえ高まります。
「20度=暖かい」は、バイク乗りにとっては危険な罠なのです。

【結論】ジャケットは「3シーズン」一択!メッシュがNGな理由
では、何を着ればいいのか?
答えはシンプルです。「3シーズンジャケット(春・秋・冬用)」を選んでください。
3シーズンジャケットとは、防風性のあるアウターに、取り外し可能な保温インナーが付いているタイプのことです。この「防風性」が、20度のツーリングでは命綱になります。
📊20度ツーリングにおけるジャケット適性比較
| 特徴 | 3シーズンジャケット(正解) | メッシュジャケット(NG) |
|---|---|---|
| 防風性 | ◎(風を通さない) 体温低下を防ぐ | ×(風を通す) 体温が奪われ続ける |
| 保温性 | ◎(インナーで調整可) 朝晩の寒さに対応 | △(ほぼ無し) 日中の停車時しか快適じゃない |
| 20度での快適性 | ベンチレーションを開ければ快適 | 走り出すと寒い |
| リスク | 暑ければ脱げばいい(安全) | 寒くても着るものがない(危険) |
「暑かったらどうするの?」と思うかもしれませんが、3シーズンジャケットには大抵「ベンチレーション(換気用ファスナー)」が付いています。これを開ければ風を取り込めるので、日中の20度なら十分涼しく走れます。
逆にメッシュジャケットで寒くなった場合、上からカッパを着るくらいしか対策がなく、せっかくのツーリングが「寒さとの戦い」になってしまいます。
朝・昼・夕を完全攻略!「コンビニ休憩」で調整するレイヤリング術
装備が決まったら、次は「運用」です。
ツーリングは時間帯によって気温が激変します。「こまめな脱ぎ着」こそが、ベテランライダーの知恵です。
おすすめの調整アイテムは、「ウルトラライトダウン(またはコンパクトなウインドブレーカー)」です。これをミドルレイヤー(中間着)として活用します。
20度ツーリングの「脱ぎ着」シミュレーション
- 朝(出発時):フル装備
- 気温10〜15度。寒いので、Tシャツ+ウルトラライトダウン+3シーズンジャケット(インナー付き)で出発。
- 昼(目的地・山道):調整タイム
- 気温20度。暑くなってきたら、コンビニ休憩でウルトラライトダウンを脱いでバッグへ。
- ジャケットのベンチレーションを開放して走行。
- ※標高の高い山道に入る前は、再びダウンを着込むのを忘れずに!
- 夕(帰路):再装備
- 日が落ちて気温低下。寒さを感じる前に、PAなどでダウンを再び着用。
このように、「暑い・寒い」を感じる前に、休憩ついでに調整するのがコツです。面倒くさがらずに調整することで、疲労感が劇的に変わります。
意外な盲点?「3つの首」を温めるだけで体感温度は劇的に変わる
最後に、ジャケット以外で体感温度をコントロールする裏技を紹介します。
それは「首・手首・足首」の3つの首を温めることです。
特に「ネックウォーマー」は必須アイテムです。
首元から風が入ると、体全体が冷えてしまいます。薄手のもので良いので、ネックウォーマーを一つポケットに入れておきましょう。
- 寒い時: 鼻まで覆って風をシャットアウト。
- 暑い時: 信号待ちでサッと外してポケットへ。
この手軽さが、寒暖差のある20度のツーリングでは最強の武器になります。
同様に、グローブとジャケットの隙間(手首)、ブーツとパンツの隙間(足首)から風が入らないよう、長めの靴下やグローブを選ぶのもポイントです。
まとめ:寒さをコントロールして、最高のツーリングを
最高気温20度は、装備選びさえ間違えなければ、バイクにとって最高のツーリング日和です。
「メッシュで失敗した」という苦い経験は、もう過去のものにしましょう。
- 走行風で体感温度は冬並みになることを知る。
- 防風性のある「3シーズンジャケット」を選ぶ。
- インナーダウン等で、こまめに「脱ぎ着」して調整する。
準備はいいですか?
寒さへの不安を消し去って、エンジンの鼓動と流れる景色を純粋に楽しむ。そんな最高の週末が、あなたを待っています。
安全運転で、行ってらっしゃい!
参考文献リスト