この記事を書いた人:坂本 雅(さかもと みやび)
行事マナーアドバイザー / 元呉服店バイヤー
呉服店勤務時代に1,000組以上のお宮参り衣装を提案。「伝統は大切だけど、主役は赤ちゃんとママ」をモットーに、形式にとらわれすぎない現実的なマナー提案を行う。現在は育児メディアでコラムを連載中。
「お宮参りの着物はどうするの?」
お義母様からの突然の連絡に、ドキッとしていませんか?
産後の体調もまだ万全ではない中、男の子の正装のルールなんて分からないし、高価な着物を買うべきか、それともレンタルで済ませていいのか……。失敗して「常識がない」と思われたくないけれど、何を基準に選べばいいのか分からず焦ってしまいますよね。
そのお気持ち、痛いほど分かります。私も呉服店時代、同じようなプレッシャーに悩むママたちを何人も見てきました。
でも、大丈夫です。現代のお宮参りは、無理に高価な着物を購入する必要はありません。
大切なのは、「義実家を納得させる伝統的な見た目」と「赤ちゃんの快適性」を両立することです。
この記事では、元呉服店バイヤーの私が、お義母様に「しっかり考えて選んでくれたのね」と褒められる「柄選びの正解」と、赤ちゃんを不機嫌にさせないための「季節別インナー術」を伝授します。
外側は伝統的に、内側は機能的に。この「ハイブリッド・コーデ」で、笑顔の記念日を迎えましょう。
男の子の正装「祝い着」の基本と、義実家を味方につける「柄」の選び方
まずは、男の子のお宮参りにおける「正装」の基本を押さえましょう。ここさえ間違えなければ、お義母様やご親族に対しても胸を張って当日を迎えられます。
男の子の正式な祝い着(掛け着)は、「熨斗目(のしめ)」と呼ばれます。
背中や袖に勇壮な絵柄が描かれているのが特徴で、これには「我が子の健やかな成長と出世」を願う深い意味が込められています。
実は、この「柄の意味」を知っていることこそが、義実家からの信頼を勝ち取る最大の武器になります。
「ただ何となく選びました」と言うよりも、「この柄には〇〇という意味があるので、あの子にぴったりだと思って選びました」と伝えられれば、お義母様も「孫のためにそこまで考えてくれたのね」と安心し、納得してくださるはずです。
ここでは、特に人気が高く、義実家受けも良い代表的な柄の意味をご紹介します。ぜひ、衣装選びや当日の会話の「カンペ」として活用してください。
🎨 デザイナー向け指示書:インフォグラフィック
件名: 男の子の祝い着「柄の意味」カンペリスト
目的: 読者が義母への説明材料として直感的に理解し、記憶できるようにする。
構成要素:
1. タイトル: 義母に褒められる!男の子の「柄」に込められた願い
2. 鷹(たか): イラスト(鷹)+「千里を見通す眼力で本質を見抜き、鋭い爪で幸運を掴んで離さない(出世・大成)」
3. 兜(かぶと): イラスト(兜)+「大切な頭を守る=災厄から身を守る。権威の象徴としてリーダーシップを発揮する(守護・大将)」
4. 龍(りゅう): イラスト(龍)+「天に昇る姿から、運気上昇と飛躍を象徴。辰年の男の子には特に縁起が良い(飛躍・立身出世)」
5. 宝船(たからぶね): イラスト(宝船)+「一生ものに困らない豊かな人生を送れるように(繁栄・幸福)」
デザインの方向性: 和モダン。落ち着いた紺や金を使用し、高級感と信頼感を演出。
参考altテキスト: 男の子のお宮参り着物の柄(鷹、兜、龍、宝船)の意味を解説した一覧図。
このように、熨斗目(のしめ)という伝統的な形式と、義実家への信頼獲得は、「柄の意味を理解する」という手段によって強く結びついています。
色は伝統的な「黒」や「紺」が定番ですが、最近では「白」や「深緑」、「ベージュ」などのモダンな色も人気です。柄の意味さえしっかり押さえておけば、色はママやパパの好みで選んでもマナー違反にはなりませんのでご安心ください。
【季節別】赤ちゃんが泣かない!祝い着の下の「見えない正解」インナー
「立派な着物を着せるのはいいけれど、赤ちゃんが暑がって泣かないかしら?」
「男の子にベビードレスを着せてもおかしくないの?」
そんな不安をお持ちのママへ。ここからは、赤ちゃんの快適性を守るための「中身」のお話をしましょう。
結論から言うと、男の子にベビードレスを着せても全く問題ありません。
むしろ、私は積極的に推奨しています。なぜなら、外側の「祝い着(掛け着)」と内側の「ベビードレス」は、役割を分担して補完し合う関係にあるからです。
写真撮影やお参りのご祈祷中など、ここぞという場面では祝い着を掛けて「伝統的な正装」を見せます。この時、中の服はほとんど見えません。
一方で、移動中や食事会、授乳のタイミングでは、重たくて暑い祝い着を脱ぎます。その時、肌触りの良いベビードレスや機能的な洋装であれば、赤ちゃんはリラックスして過ごせます。
これが、私が提案する「ハイブリッド・コーデ」です。
では、具体的に季節ごとにどのようなインナーを選べば、赤ちゃんが快適に過ごせるのでしょうか。失敗しない組み合わせをまとめました。
📊 比較表
表タイトル: 【季節別】祝い着の下は何を着る?快適インナー組み合わせマトリクス
| 季節 | 祝い着(掛け着)の選び方 | インナー(中身)の正解 | 赤ちゃん快適ポイント |
|---|---|---|---|
| 春・秋 (4-5月, 10-11月) | 袷(あわせ) 一般的な裏地ありの着物 | 短肌着 + ベビードレス (またはツーウェイオール) | 気温に応じて、肌着の素材(綿・ガーゼ)で微調整しましょう。 |
| 夏 (6-9月) | 絽(ろ) 通気性の良いメッシュ状の着物 | メッシュ短肌着 + 薄手ロンパース (靴下は撮影時のみ) | 汗をかいたらすぐに着替えられるよう、予備の肌着は必須です。 |
| 冬 (12-3月) | 袷(あわせ) 一般的な裏地ありの着物 | 短肌着 + ベビードレス + おくるみ (移動中はケープ等で防寒) | 祝い着自体に防寒性はありません。「外側から羽織るもの」で調整を。 |
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 夏のお宮参りなら、迷わず「絽(ろ)」の祝い着をレンタルしてください。
なぜなら、一般的な着物(袷)を真夏に着せると、赤ちゃんは数分で汗だくになり、不快感で泣き出して撮影どころではなくなる失敗が多いからです。「絽」は透け感があり涼しげですが、写真に撮れば立派な正装に見えます。赤ちゃんの笑顔を守るための、プロ一押しの選択です。
「購入vsレンタル」どっちが得?現代の主流と賢い手配スケジュール
「やっぱり一生に一度のことだし、買ったほうがいいのかな……」と迷っている方もいるかもしれません。
しかし、現代のお宮参り事情を客観的に見ると、実は約7〜8割のご家庭が「レンタル」を利用しています。
お宮参りの衣装(祝い着)は、購入よりもレンタルを利用する人が約7〜8割を占めています。出典: [お宮参りの産着は購入?レンタル?どっちがお得か徹底比較](https://www.nicebaby.co.jp/) - ナイスベビー, 2024
レンタルと購入は、単なる「借りるか買うか」の違いではなく、コストパフォーマンスと手軽さにおいて競合・代替の関係にあります。
かつては「母方の実家が贈るもの」という慣習もありましたが、現在は保管の手間やコストを考え、賢くレンタルを選ぶのが主流です。
それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。
📊 比較表
表タイトル: お宮参り衣装「購入 vs レンタル」徹底比較
| 項目 | 購入(百貨店・呉服店) | ネットレンタル | 判定 |
|---|---|---|---|
| 費用相場 | 30,000円 〜 100,000円以上 | 3,000円 〜 15,000円 | レンタルがお得 |
| 品質 | 正絹(シルク)などの高級品が多い | 高級正絹からポリエステルまで選べる | 同等レベルも可能 |
| 準備の手間 | 紋入れに数週間かかる場合あり | 2〜3日前にフルセットで届く | レンタルが楽 |
| 使用後の管理 | クリーニング(数千円)と湿気対策が必要 | そのまま返却BOXに入れるだけ | レンタルが圧倒的に楽 |
| メリット | 家紋を残せる、七五三で仕立て直せる | 常に清潔、季節に合わせた素材(絽など)を選べる | - |
ご覧の通り、「レンタル」は現代の忙しいママにとって、コスパと手軽さの両面で非常に合理的な選択肢です。
浮いた予算で、プロのカメラマンによる出張撮影を依頼したり、食事会のグレードを上げたりするご家庭も増えていますよ。
よくある質問:家紋はどうする?誰が抱っこする?
最後に、お宮参りの準備でよくご相談いただく「細かいけれど気になる疑問」にお答えします。
Q. レンタルの場合、家紋はどうすればいいですか?
A. 基本的には「通紋(つうもん)」で問題ありません。
多くのレンタル着物には、誰が使っても問題ない「五三の桐」などの通紋が入っています。もしお義母様が「家の紋じゃないとダメ」とこだわられる場合は、着物の上からシールのように貼れる「貼り紋」に対応しているレンタル店を選ぶか、写真撮影の時だけ画像修正で家紋を入れてもらう方法があります。
Q. 当日は誰が赤ちゃんを抱っこするのが正解ですか?
A. 伝統的には「父方の祖母」ですが、柔軟でOKです。
昔は「産後の母親は穢れ(けがれ)がある」とされたため、父方の祖母が抱っこする風習がありました。しかし現在は、ママが抱っこしても全く問題ありません。
ただ、お義母様を立てる意味でも、「お義母様、抱っこしていただけますか?」と一度お願いすると、とても喜ばれます。記念撮影ではママが抱っこ、ご祈祷中は祖母が抱っこ、というように分担するのも素敵ですね。
伝統も快適さも諦めない。笑顔のお宮参りを
お宮参りは、赤ちゃんが無事に生まれたことを神様に感謝し、これからの健やかな成長を願う大切な行事です。
「マナーを守らなきゃ」「お義母様に失礼がないように」と気負いすぎてしまう気持ちも分かりますが、何より大切なのは、主役である赤ちゃんと、産後間もないママが笑顔で過ごせることです。
祝い着はレンタルで豪華な柄を選んで「伝統」を立て、中身は季節に合わせた洋装で「快適さ」を守る。
この賢いハイブリッド・コーデなら、お義母様も、赤ちゃんも、そしてママ自身も、みんなが満足できる一日になるはずです。
人気の柄や、夏用の「絽」の着物は、良い日程からすぐに予約が埋まってしまいます。
まずはレンタル店のカタログを眺めて、「この柄なら、あの子に似合いそう!」「これならお義母さんに説明できそう!」と思える一着を探すことから始めてみませんか?
素敵な記念日になりますように、心から応援しています。
参考文献
- お宮参りの着物の柄の意味~男の子編~ - きもの永見
- 男の子のお宮参りはいつ?必要なものや着物・ベビードレスの選び方も解説 - ミルポッシェ
- お宮参りの産着は購入?レンタル?どっちがお得か徹底比較 - ナイスベビー