「あと5cm、いやせめて3cm低ければ、人生が変わったのに」。
試着室の鏡の前で、丈の足りないスカートを握りしめながらそう思ったことはありませんか? その気持ち、身長174cmの私には痛いほど分かります。電車で吊革が目の前に来る気まずさ、ヒールを履いた時の「見下ろしてる感」。私も学生時代は、「縮みたい」と毎日泣いていました。
でも、怪しい整体や危険な手術に手を出す前に、知ってほしい真実があります。
この記事では、物理的に縮むことの医学的な現実と、1cmも縮めずに「デカい」という印象を「モデル級」に変える、プロ直伝の錯視テクニックを伝授します。
読み終わる頃には、きっと今の172cmという身長が、少し好きになっているはずです。
この記事の著者

高橋 エリナ
パーソナルスタイリスト / 元高身長モデル(174cm)
自身も174cmの身長に悩み、猫背で過ごした過去を持つ。「トールサイズ女子」専門のスタイリングサロンを運営し、延べ1,000人以上の高身長女性の魅力を開花させてきた。「あなたの身長は隠すべき欠点ではなく、磨けば光るダイヤモンドの原石」がモットー。
「整体で身長が縮む」は嘘?まずは医学的な現実を知ろう
「整体に通えば骨盤が締まって身長が縮む」「特別なストレッチで背が低くなる」。
ネット上にはそんな甘い言葉が溢れていますよね。正直に言います。私も昔は、雑誌の裏に載っている「縮むサプリ」を本気で信じていました。藁にもすがる思いで、お小遣いを叩いたこともあります。
しかし、専門家として断言します。成長期を過ぎた大人の骨が、整体やストレッチで物理的に縮むことは医学的にあり得ません。
なぜなら、私たちの身長を決めているのは「骨の長さ」そのものだからです。骨の両端には「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる成長点がありますが、これは通常15歳から17歳頃に閉じて硬い骨になります。一度閉じてしまった骨端線は、二度と動くことはなく、骨が自然に短くなることもありません。
骨端線が閉鎖すると、骨の長径成長は止まります。(中略)一度完成した骨が、加齢による変化以外で自然に短くなることはありません。
出典: 加齢と共に身長が縮むのはなぜ? - 慶元整形外科リハビリ骨粗鬆症クリニック
つまり、「骨端線」と「身長短縮」は完全に否定の関係にあります。整体で「縮んだ」と感じる人がいるとすれば、それは一時的に姿勢が悪くなったか、測定誤差に過ぎません。無理な矯正で体を歪めることは、腰痛やヘルニアの原因になるだけで、百害あって一利なしです。
それでも「数値」を減らしたいあなたへ。唯一の即効薬は「時間帯」
「理屈はわかったけど、健康診断の数値だけでも減らしたいの!」
そんな切実な願いを持つあなたに、唯一の即効薬をお教えします。それは、「身長を測る時間帯」を変えることです。
実は、人間の身長は1日の中で変動しています。これを「日内変動」と呼びます。
私たちの背骨の間には「椎間板(ついかんばん)」というクッションがありますが、この椎間板は水分を多く含んでいます。朝起きた時は水分でパンパンに膨らんでいますが、日中活動して重力を受け続けることで、夕方には水分が抜けて潰れてしまいます。
至学館大学の研究によれば、起床時と就寝前では、平均して約1.8cm、多い人では3cm近くも身長が低くなることが分かっています。
身長の日内変動は、起床直後が最も高く、時間の経過とともに低下し、就寝前が最も低くなる。(中略)その差は平均1.8cm程度である。
出典: 身長の日内変動に関する研究 - 至学館大学 健康科学部
つまり、「日内変動」は「身長測定」の結果を左右する最大の変動要因なのです。夕方のあなたは、朝のあなたより確実に2cm小さい。これは魔法ではなく、生理現象です。

専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 健康診断や、彼との初デートなど「少しでも小さく見せたい日」は、必ず「午後(できれば夕方)」に予定を入れましょう。
なぜなら、多くの人がこの「日内変動」を見落としがちですが、朝イチの健康診断で「また伸びた!」と落ち込むのは本当にもったいないからです。夕方の測定なら、堂々と「私、170cmです(朝は172cmあるけど)」と言い張れますよ。
1cmも縮めずに「圧」を消す!プロ直伝「錯視ファッション」の魔法
さて、ここからが本番です。
物理的に骨を削らなくても、人の目の錯覚を利用すれば、あなたの印象は劇的に変わります。
172cmのあなたが悩んでいる「デカい」「威圧感がある」という印象。これは身長そのものよりも、「面積」と「縦のライン」が強調されすぎていることが原因です。
「錯視効果」は、この「威圧感」を消し去るための最強の解決策です。私が1,000人以上の高身長女子に伝授してきた、3つの鉄板テクニックを紹介します。
1. 「分断コーデ」で縦の長さを断ち切る
背を高く見せたい時は、上下を同じ色でまとめる「Iライン」が有効ですが、私たちはその逆を行きます。
トップスとボトムスで全く違う色(コントラストの強い色)を使い、視覚的に体を上下に「分断」してください。
さらに、太めのベルトでウエストマークをするのも効果絶大です。視線が腰の位置で一度止まるため、頭からつま先までの長い距離を一気に見られることを防ぎ、「スラッとしているけど、巨大ではない」という印象を作れます。
2. 「Aラインの法則」で脚の長さをあえて隠す
「背が高いから、中途半端な丈のスカートだとツンツルテンに見える…」。これも高身長あるあるですよね。
ここでの正解は、思い切ってマキシ丈(くるぶし丈)のスカートやワイドパンツを選ぶことです。
裾に向かって広がる「Aライン」のシルエットを作ると、視線が下に広がり、高さよりも「優雅さ」が強調されます。また、マキシ丈で脚の露出を隠すことで、「実際の脚の長さ(=身長の高さ)」を相手に想像させないという高度な錯視効果も働きます。
3. 最大の逆効果!「脱・猫背」があなたを小さく見せる
「小さく見せたい」という一心で、無意識に猫背になっていませんか?
はっきり言います。「猫背」は「見た目の印象」において、完全に逆効果です。
背中を丸めた172cmは、小さく見えるどころか、「自信がなさそうで、ぬっとした巨大な物体」に見えてしまいます。周囲に「私は自分の大きさを気にしています」と宣伝して歩いているようなものです。
逆に、背筋をピンと伸ばしてみてください。メリハリが出て体の厚みが減り、スッキリとして見えます。堂々とした態度は、威圧感を「オーラ」や「カッコよさ」に変える力があります。

よくある質問:骨短縮手術や筋トレの影響は?
最後に、サロンのお客様からよく受ける質問に、プロの視点でお答えします。
Q. 骨を削る「骨短縮手術」は日本でもできますか?
A. 可能ですが、美容目的では全くおすすめしません。
「骨短縮手術」には、極めて高い「リスク」が伴います。費用は数百万円かかりますし、感染症や神経麻痺、最悪の場合は歩行障害が残る可能性もあります。日本整形外科学会などの専門機関も、美容目的での骨の手術は推奨していません。172cmという素敵なスタイルを犠牲にしてまで、歩けなくなるリスクを負う必要はありません。
Q. 筋肉を落とせば小さくなりますか?
A. 筋肉を落とすと姿勢が悪くなり、逆効果です。
筋肉が落ちて体がたるむと、締まりがなくなり、実際のサイズ以上に「大きく(太く)」見えてしまいます。適度な筋肉で体を引き締めた方が、視覚的にはコンパクトで美しく見えます。
Q. 夜更かしをすれば成長は止まりますか?
A. 止まりませんし、肌が荒れて魅力が半減するだけです。
成長ホルモンは睡眠中に分泌されますが、19歳の今、夜更かしをしたからといって骨が縮むことはありません。むしろ、睡眠不足は肌荒れやメンタルの不調を招き、あなたの本来の美しさを損なうだけです。しっかり寝て、朝の「日内変動」で縮んだ自分を愛してあげましょう。
まとめ:172cmは「デカい」じゃない。「高嶺の花」だ。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
物理的に身長を縮める魔法はありませんでしたが、「日内変動」と「錯視ファッション」という、今日から使える2つの武器を手に入れましたよね。
172cmの身長は、決して「デカい」だけの欠点ではありません。
それは、どんな服も着こなせるモデルのような骨格であり、人混みの中でも埋もれない存在感であり、多くの女性が喉から手が出るほど欲しがる「高嶺の花」の才能です。
まずは今日、鏡の前で背筋を伸ばしてみてください。
そこに映っているのは、コンプレックスに怯える「巨人」ではなく、誰よりもスタイルが良い「モデル」のあなたです。
さあ、その長い脚で、堂々と街へ出かけましょう!
参考文献
- 加齢と共に身長が縮むのはなぜ? - 慶元整形外科リハビリ骨粗鬆症クリニック
- 身長の日内変動に関する研究 - 至学館大学 健康科学部
- 高身長女子の着こなしテク - Oggi.jp