顎の下のしこり、押すと痛いのは「がん」じゃない?良性・悪性の見分け方!
夜中にふと顎の下を触って「しこり」を見つけると、心臓が止まるほどびっくりしますよね。
「もしかして、悪性リンパ腫?」「がんの転移?」
スマホで検索しては怖い病名ばかりが目に入り、眠れなくなっているあなたへ。
まずは深呼吸してください。
耳鼻咽喉科専門医として、結論から申し上げます。
「押すと痛い」場合、それはがんではなく「リンパ節炎」などの炎症である可能性が高いです。
パニックになる必要はありません。
この記事では、今すぐできる「危険なしこりチェック法」と、正しい受診のタイミングについて、専門医の視点から分かりやすく解説します。
この記事を書いた人
小川 健太郎 おがわけんたろう(本人希望により仮名)
耳鼻咽喉科専門医・医学博士
大学病院で20年以上、頸部腫瘍(首のしこり)の診断・手術に従事。「首のしこり外来」を担当し、年間1,000人以上の患者を診察。ネット上の過剰な不安情報に惑わされる患者さんに対し、「ここまでは様子見OK、ここからは即受診」という明確な線引き(トリアージ)を示すことを信条としている。
「押すと痛い」そのしこり、実は体が戦っている証拠かも?
「痛いから、悪い病気に違いない」
そう思い込んでいませんか?
実は、我々専門医の感覚は逆なんです。
外来で患者さんが「先生、しこりが痛くて心配で…」と来られると、私は内心少しホッとします。
なぜなら、痛みは体が正常に機能している証拠(免疫反応)であることが多いからです。
痛みは「合戦の音」
顎の下には「リンパ節」という、体の検問所のような組織がたくさんあります。
風邪のウイルスや虫歯菌などが体に入ってくると、このリンパ節で免疫細胞とバイ菌の戦いが始まります。
この戦いが激しくなると、リンパ節が腫れて熱を持ち、痛みを出します。これが「急性リンパ節炎」です。
つまり、あなたが感じているその痛みは、体がバイ菌と戦っている「合戦の音」のようなもの。
逆に、一番怖い「がん(悪性腫瘍)」は、サイレントキラーと呼ばれるように、初期段階では痛みを伴わずに静かに大きくなることがほとんどなのです。
専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「痛い=がん」という方程式は忘れてください。むしろ「痛い=炎症(良性)」の可能性が高いです。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちですが、悪性リンパ腫やがんの転移は、初期には「無痛」であることが最大の特徴だからです。痛みがあるということは、あなたの体が正常にSOSを出して戦っている証拠。まずはその頑張りを認めてあげて、落ち着いてくださいね。
触ってチェック!危険なしこり vs 安全なしこり「3つの違い」
では、あなたのしこりが「緊急を要するもの(悪性)」なのか、「炎症(良性)」なのか、どうやって見分ければいいのでしょうか。
私が診察室で実際にチェックしている「3つのポイント」をお教えします。
優しく触りながら確認してみてください。
1. 痛み(圧痛)はあるか?
- 良性(炎症): 押すと痛い(圧痛がある)。
- 悪性(腫瘍): 押しても痛くないことが多い。
2. 硬さはどれくらいか?
- 良性(炎症): 「スーパーボール」や「グミ」のような、弾力のある硬さ(弾性硬)。
- 悪性(腫瘍): 「石」や「梅干しの種」のような、カチカチの硬さ(石様硬)。
3. 動くか、動かないか?
- 良性(炎症): 指で押すとクリクリと逃げるように動く(可動性良好)。
- 悪性(腫瘍): 周囲の組織と癒着して、根を張ったように動かない(可動性不良)。
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?? *比較表表タイトル:* 良性(炎症)と悪性(腫瘍)の特徴比較
| 特徴 | 良性(リンパ節炎など) | 悪性(がん・リンパ腫など) |
|---|---|---|
| 痛み | あり(押すと痛い) | なし(無痛が多い) |
| 硬さ | スーパーボール・ゴム | 石・梅干しの種 |
| 動き | クリクリよく動く | 癒着して動かない |
| 増大 | 急に大きくなる(数日) | ゆっくり大きくなる(数ヶ月) |
| 皮膚 | 赤く腫れることがある | 変化なし |
** |

原因は虫歯?それとも石?「痛いしこり」の正体トップ3
「がんじゃないなら、このしこりは一体何なの?」
そう思いますよね。
急性リンパ節炎以外にも、顎の下が痛くなる病気はいくつかあります。代表的なものを3つ紹介します。
1. 急性リンパ節炎
最も多い原因です。風邪、扁桃炎、虫歯、口内炎などの細菌がリンパ節に飛び火して起こります。
特徴: 風邪気味だったり、虫歯があったりする。抗生物質を飲むと数日で小さくなります。
2. 唾石症(だせきしょう)
唾液を作る「顎下腺(がっかせん)」という場所に石ができる病気です。
特徴: 「食事の時」や「酸っぱいものを見た時」に急激に痛くなり、腫れます。食後しばらくすると治まるのが典型的です。
3. 粉瘤(ふんりゅう・アテローム)
皮膚の下に袋ができて、垢(あか)がたまる病気です。そこにバイ菌が入ると赤く腫れて痛みます。
特徴: しこりの中心に黒い点(開口部)が見えることがあります。皮膚の浅い部分にあるのが特徴です。
これらはすべて、耳鼻咽喉科で診断・治療が可能です。
病院は何科?「明日行くべき」か「様子見」かの判断基準
「何科に行けばいいの?」「明日会社を休んで行くべき?」
迷いますよね。
受診すべき診療科は「耳鼻咽喉科」一択
「皮膚の下だから皮膚科?」「顎だから歯科?」と迷う方が多いですが、首のしこりの専門家は耳鼻咽喉科です。
耳鼻咽喉科なら、ファイバースコープで喉の奥を見たり、エコー(超音波)検査でしこりの中身を見たりして、的確な診断ができます。
受診のタイミング(トリアージ)
- 【明日すぐに受診】
- 痛みが強くて食事がとれない
- 38度以上の熱がある
- しこりが急激に大きくなっている
- 皮膚が真っ赤に腫れている
- 【数日以内に受診(様子見OK)】
- しこりは小さい(1cm以下)
- 痛みは我慢できる程度
- 熱はない
ただし、様子見の場合でも、2週間経っても消えない、あるいは大きくなる場合は、痛みがなくても必ず受診してください。
よくある疑問(FAQ)
Q. とりあえず冷やした方がいいですか?温めた方がいいですか?
A. 痛みが強い時は「冷やす」のが無難です。
急性の炎症で熱を持っている時は、冷やすことで痛みや腫れが和らぎます。逆に温めると血流が良くなりすぎて、ズキズキした痛みが増すことがあります。
Q. 市販の抗生物質で治せますか?
A. 基本的には病院での処方薬が必要です。
ドラッグストアで売っているのは「抗菌目薬」や「化膿止めの軟膏」などで、飲むタイプの抗生物質は市販されていません。痛みが強い場合は、ロキソニンなどの痛み止めを飲んで凌ぐのはOKですが、根本治療にはなりませんので、早めに受診しましょう。
まとめ:今夜はゆっくり休んで大丈夫
顎の下の「押すと痛い」しこり。
その正体は、多くの場合、あなたの体がバイ菌と戦っている証拠(リンパ節炎など)であり、今すぐ命に関わるような「がん」である可能性は低いです。
- 押すと痛い
- スーパーボールのような硬さ
- クリクリ動く
この3つが当てはまるなら、過度な心配は不要です。
パニックになってネット検索を続けるのはやめて、今夜はゆっくり体を休めてください。睡眠をとることで免疫力が上がり、炎症が治まりやすくなります。
そして、もし痛みが続くようなら、明日は近くの耳鼻咽喉科を受診しましょう。
専門医に診てもらえば、「なんだ、ただの炎症か」と安心して帰れるはずです。