家紋は家柄や血筋を表すものであり、現代でも仏壇や和服などに使用されています。
ただ、創作物などで目にすることはあっても、ご自身の家紋を知らない人は少なくありません。
親戚付き合いも希薄であり、核家族化も進んでいる現代では、自身の家紋を調査するのはそれほど簡単ではありません。
家紋特有の法的規制はありませんから、好きに選択して使っても構わないのですが、中には使用NG(もしくは使うべきではない)な家紋もあります。
悪気はなくても無断使用すれば訴えられてもおかしくありません。
そこでここでは家紋について簡単に解説していきます。
家紋とは?家紋の基礎知識
先祖代々継承されてきた「家」を表す紋章のことを家紋と呼びます。会社のロゴなどと似ているといえます。
ただ、会社のロゴとは異なり、別の家であっても共通した家紋をしようしているケースがあります。
また、名字が一緒でも違う家紋を使っていることも多々あります。
その家にゆかりのある紋様(出身地、家業など)が家紋として採用されることが多く、自身の着物や持ち物などに目印として施していました。
元々は公家から始まった文化であり、武家や大名にも広まりました。
そして明治の初め頃、戸籍制度がスタートしたあたりから、ようやく庶民にも浸透したとされています。
また、戦場では旗に家紋を大きくつけることで敵味方を見分けやすくしていましたし、大将は家紋がついた旗を確認して、武将としての活躍を評価していたと言われています。
薄れゆく家紋文化
家紋は役所などに届け出て登録するものではありませんから、調べても自身の家の家紋がわからない場合もあります。
家との関わりがなくなれば、調査する方法もありません。
また率直に言って、現代で家紋が必要になるような場面はほぼないため、これからも家紋文化は薄れ続けていくと見られています。
使ってはいけない(使用するべきではない)家紋について
家紋は2万種類以上あるとされていますが、中には使用してはならない(使用するべきではない)家紋もあります。
- 商標登録済の家紋
- 三つ葉葵
- 菊花紋章
- 桐紋
- 有名戦国武将の家紋
ではそれぞれについて解説していきます。
○商標登録済の家紋
商標登録済の家紋は、権利者の許可がなければ使用できません(交渉しても恐らく許可されないでしょう)。無断で使えば訴えられる可能性もあります。
企業 | マーク | 概要 |
---|---|---|
三菱グループ | 三菱マーク | 「三階葵」と「三つ柏」を組み合わせたもの |
シマヅ | 丸に十字 | 薩摩藩島津家の家紋 |
トモエ算盤 | 左三つ巴 | 創業者の家紋をそのまま使用 |
ミツウロコ | 三つ鱗 | 創業者の家紋を図案化 |
伊達家伯記念會株式会社 | 竹にスズメ、仙台笹 | 伊達家の家紋 |
軽く調べてみただけでも数々の家紋が出てきます。会社のロゴとして使用されているケースが大半です。
他にも商標登録済の家紋は多いですから、何らかの理由で家紋を使いたい場合は、まず特許庁のウェブサイトをチェックしましょう。
○三つ葉葵
三つ葉葵は徳川の家紋として知られています。
江戸時代に幕府が使用を禁じ、徳川家が支配する前から三つ葉葵を使っていた家は、家紋を変えるほどでした。
それほど強い権力のシンボルだったといえます。
ただ、明治維新とともに三つ葉葵の使用禁止令は廃止されましたし、今でも規制はされていません。
ですがあまりにも知名度が高いですから、トラブルを避けるためにもこの家紋は使わないことをおすすめします。
○菊花紋章
こちらは皇室の紋章です。
実はルール上自由に使っていいのですが、それでも使用しないのが暗黙の了解となっています。
なお明治時代には法律で使用が禁じられていました(戦後に解禁されました)。
○桐紋
豊臣秀吉の家紋です。今でも日本政府が使用しており、レンタル衣装に施されていることもありますから、見たことがある方も多いのではないでしょうか。
元々、桐紋は皇室のシンボルとして権威のある紋章でした。ただ、菊花紋章とは異なり、「時の権力者から賜る(たまわる)褒美」という意味合いがあります。
豊臣秀吉も朝廷から桐紋を賜りましたが、惜しみなく配下に与えました。
たくさんの武家の家紋となった桐紋がレンタル衣装として使用されるようになったきっかけは、「家紋がない・知らない場合の利便性に配慮したこと」にあるとされています。
ただ、この紋章を作ってもレンタルと勘違いされてしまうかもしれません。特に着物につける紋章としてはおすすめできません。
また、日本政府も使っていましたから、私たち一般人は使わないのが無難といえるでしょう。
○有名戦国武将の家紋
商標登録されていなければ戦国武将の家紋を使っても大丈夫です。
ただ、有名な戦国武将の家紋の場合、血筋や家紋について尋ねられたり、憶測されたりする可能性がありますから避けるのが無難といえるでしょう。
家紋を自作する方法
原則として家紋に著作権はありませんから自作して構いません。
大半の家紋は戦国時代に作られていますから、ほとんどの家紋の著作権は消滅しています。
そして調査してもご自身の家紋が判明しないのであれば、新たに自作するのもいいでしょう。
独自の家紋を作りたい方には、以下のいずれかの方法をおすすめします。
- 自分でデザインする
- プロに頼む
- サイトやアプリを使う
デザインが得意であればすべて自力で仕上げるのもいいでしょう。
デザインが苦手な方は、プロに依頼してクオリティの高い家紋を作ることを検討しましょう。スキルを売るクラウドソーシングサイトなどでも家紋を作成するサービスを提供している人は少なくありません。
また、家紋を作成できる無料サイト・アプリもありますからチェックしてみてはいかがでしょうか。基本的にパーツを選択して組み合わせて家紋を作ることになります。
家紋の商標登録手順
極端に簡単な図柄でなければ、自作の家紋を商標登録できます。
- 調査
- 出願
- 審査
- 登録完了
まずは調査をしなければなりません。「とりあえず出願してみて審査で弾かれたらそのときは仕方がない」という意識で臨むのはやめましょう。
無料で商標を検索できるサイトがありますから、そちらでチェックしてください。
独自の家紋ではなく、伝統的な家紋を商用登録するケースでは、違うルールが適応されますから気を付けましょう。
以前、三つ葉葵と菊花紋章だけでなく、「結び雁金」や「六文銭」などの知名度の高い家紋の出願申請が弾かれた事例もあります。
そして家紋の商標登録に臨む前に、「家紋からなる商標登録出願の取扱い」や「商標審査便覧」も確認しておくことを推奨します。
家紋は基本的に自由に作成できますが、ルールはありますし、暗黙の了解もある世界です。
あなたの何代も先まで使うことになるでしょうから、諸々のことをしっかり理解した上で独自の家紋を作りましょう。