著者情報:新田 健二(あらた けんじ)
現役眼科専門医 / 屈折矯正手術指導医。症例数1万件以上の執刀経験を持つ。自身も30代でICL(眼内コンタクトレンズ)手術を受け、現在は裸眼で手術を行う「当事者」でもある。医療の透明性を重視し、エンジニアが求める光学的な精緻さに基づいた誠実な情報発信を信条としている。
長年のコンタクトレンズによる目の疲れから解放されたい。そう願って訪れた眼科クリニックで、執刀医が分厚いメガネをかけているのを目撃した瞬間、佐藤さんのように「自分は騙されているのではないか?」と強い不信感を抱いた方は少なくありません。
「医者が自分にしない手術を、なぜ患者に勧めるのか。実はレーシックには、プロしか知らない隠された危険があるのではないか?」
そんな疑念を抱くのは、ご自身の目を大切に考えているからこその、極めて健全な反応です。しかし、結論から申し上げましょう。眼科医がメガネをかけているのは、レーシックが危険だからではなく、「プロとして特定の視覚機能を維持するための、極めて合理的な戦略的選択」なのです。
本記事では、一般にはあまり知られていない「医師の受給率データ」を公開し、特にITエンジニアの方が重視すべき「視覚の質」を守るための、プロの判断基準を詳しく解説します。
H2-1: 「医者はやらない」は本当か?統計が示す眼科医の驚くべき受給率
ネット上でまことしやかに囁かれる「眼科医はレーシックを受けない」という噂。しかし、実際の統計データはこの「都市伝説」を真っ向から否定しています。
米国屈折矯正手術学会(ASCRS)が専門医を対象に行った調査によれば、眼科医のレーシック受給率は約30%に達しています。一般人口における受給率が1%未満であることを考えると、眼科医は一般の方と比較して30倍以上も積極的に手術を受けている計算になります。
つまり、屈折矯正の専門医は、レーシックの価値と安全性を誰よりも深く理解し、自らその恩恵を享受している「最大のユーザー層」なのです。では、なぜ佐藤さんが出会った医師のように、依然としてメガネを愛用するプロが存在するのでしょうか。そこには、医学的なリスクとは別の、切実な「職業上の理由」があります。
H2-2: なぜ執刀医はメガネを外さないのか?プロが「あえて近視を残す」3つの合理的理由
診察室で私と目が合った瞬間、患者さんの視線が私のメガネに固定されるのが分かります。私が40代を過ぎてもなお、特定の場面でメガネを外さないのには、以下の3つの戦略的理由があるからです。
1. 調節力(老眼)への戦略的対応
40代以降、誰にでも訪れるのが「調節力」の低下、いわゆる老眼です。レーシックで遠くを完璧に(1.5など)見えるように矯正すると、老眼が始まった際に手元が極端に見えにくくなります。
私たち眼科医は、手術中に0.1mm単位の糸を縫うような精密作業を行います。あえて「軽い近視」を残しておくことで、メガネを外せば手元がクッキリ見える状態を維持しているのです。これは、調節力(老眼)とレーシックのトレードオフを理解した上での、プロの道具選びと言えます。
2. マイクロサージャリー(顕微鏡手術)の精度維持
眼科医の仕事は、顕微鏡を覗き続ける「マイクロサージャリー」です。レーシック後に稀に生じるドライアイや、わずかな光の滲み(高次収差)は、一般生活には支障がなくても、極限の精度を求める手術現場ではパフォーマンス低下に繋がる恐れがあります。
3. 医学的な「適応外」の自己判断
医師は自分の角膜の厚さや形状を誰よりも詳しく知っています。「角膜が薄い」「形状が不正である」など、医学的にリスクが高いと判断すれば、どれほど裸眼になりたくても「しない」という賢明な選択をします。これは「レーシックが危険」なのではなく、「自分の目には不向き」という個別診断の結果なのです。
🎨 デザイナー向け指示書:インフォグラフィック
件名: 40代以降の「視覚戦略」:レーシック vs あえての近視
目的: 老眼が始まった際の、遠くを合わせた目と近視を残した目の利便性の違いを視覚化する。
構成要素:
- タイトル: なぜ40代の医師は「近視」を残すのか?
- パターンA(レーシックで遠くにピント): 遠くの景色は鮮明だが、手元のスマホや書類はボヤけ、老眼鏡が必要な様子。
- パターンB(あえて近視を維持): 遠くはメガネで補正。メガネを外すと、手元の精密な作業(手術や読書)が裸眼でクッキリ見える様子。
- 補足: 「近くを見る仕事」が多いプロにとって、近視は天然の老眼鏡になる。
デザインの方向性: 清潔感のある医療系カラー(青・白)を使用。フラットデザインで対比を明確にする。
参考altテキスト: レーシックで遠くを合わせた場合と、近視を残した場合の老眼時の見え方の違いを比較した図解。
H2-3: ITエンジニアが重視すべき「視覚の質」|レーシック vs ICL 究極の選択基準
佐藤さんのようなITエンジニアにとって、視力は単なる「視力検査の数値」ではありません。コードの視認性や、ダークモードでのコントラスト、長時間画面を注視し続ける耐久性など、コントラスト感度(物の輪郭をはっきり捉える能力)こそがQOLに直結します。
現在、私たちが精密な視覚を求めるプロフェッショナルに提案するのは、レーシックに代わる選択肢としてのICL(眼内レンズ)です。
📊 比較表
表タイトル: ITエンジニアのための視力矯正術 徹底比較
| 比較項目 | レーシック | ICL(眼内レンズ) | メガネ・コンタクト |
|---|---|---|---|
| コントラスト感度 | 角膜を削るため、僅かに低下する場合がある | 角膜を削らないため、極めて良好 | 良好(レンズの汚れに左右される) |
| 可逆性(元に戻せるか) | 不可逆(戻せない) | 可逆(レンズを取り出せる) | いつでも変更可能 |
| ドライアイへの影響 | 一時的に生じやすい | ほとんど影響なし | コンタクトは悪化の原因 |
| 老眼への対応 | 遠くに固定される | 将来、レンズの交換や追加が可能 | 度数の調整が容易 |
コントラスト感度を重視するエンジニアにとって、角膜の形状を維持できるICLは、レーシックよりも「光学的に優れた」選択肢となることが多いのが実情です。また、万が一満足がいかない場合に「元の状態に戻せる(可逆性)」という安心感は、リスク管理を重視するエンジニアの気質にも合致しています。
H2-4: FAQセクション
Q: 「レーシック難民」という言葉を聞くと、やはり怖くなります。
A: 過去に集団感染や過剰矯正が問題となった事例(銀座眼科事件など)は、医学的な術式の欠陥ではなく、施設の衛生管理や不適切な診断が原因でした。現在は日本眼科学会の厳格なガイドラインにより、適応診断と衛生管理が徹底されています。大切なのは、メリットだけでなくリスクを誠実に説明する医師を選ぶことです。
Q: ICLは目の中にレンズを入れるのが怖いです。異物感はありませんか?
A: レンズは虹彩(茶目)の裏側に固定されるため、異物感を感じる神経には触れません。私自身もICLを受けていますが、目の中に何かがあるという感覚は全くありません。
まとめ:あなたの「視覚の未来」を、不信感ではなく納得感で選ぶために
眼科医がメガネをかけているのは、決してレーシックが「隠された闇」を持っているからではありません。それは、その医師が自分の年齢や職業的使命を考慮した上での、プロとしての道具選びの結果なのです。
佐藤さん、もしあなたが「裸眼でコードを書きたい」と願うなら、まずはご自身の「視覚の質」に対する優先順位を明確にしてみてください。
- 遠くの鮮明さを優先するのか
- 将来の老眼を見据えた調整を望むのか
- 万が一の際の可逆性を重視するのか
これらを執刀医にぶつけてみてください。優れた医師であれば、メガネをかけていようがいまいが、あなたのQOLに基づいた最適な「戦略」を共に描いてくれるはずです。
参考文献リスト:
- 日本眼科学会 屈折矯正手術ガイドライン(第7版) - 日本眼科学会
- 眼科医のレーシック受給率に関する調査報告 - Medical Note 医師監修記事
- 屈折矯正手術の現状と将来展望 - 山王病院 アイセンター