上司からのパワハラで苦しんでいる人は多いと言っても過言ではありません。
職場には相談窓口が設置されていますが、上司のパワハラと正面から向き合わなくてはならないためその度胸がないという人もいるでしょう。
企業でパワハラがあった場合、即日退職はできます。
ここではパワハラから逃げるために即日退職する際の注意点と正しい方法3つをご紹介していきます。
パワハラを理由に即日退職することができる
パワハラを受けている場合は即日退職することが可能です。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
「会社は、労働者の身体・生命の安全を維持しつつ、労働できる環境を整える」と労働契約法で定められているため、「パワハラがある=安全を維持できていないため法律違反」とみなされます。
参考:労働契約法のあらまし 労働契約法5条 安全配慮義務|厚生労働省
そのため、「安全でないので出勤できません」などと言って退職しましょう。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。民法第627条
また、民法をベースとすると「退職届を出してから、実際に退職できるまでに最短でも2週間かかる」のですが、パワハラをしているなど、企業側に「落ち度」があれば即日退職することができます。
そもそも「落ち度」というのは少しマイルドな表現であり、パワハラは「改正労働施策総合推進法(ハラスメント防止法)」を破っていますから、明確に法律違反と言えます。
即日退社するためパワハラの証拠を残す
パワハラの証拠を残しておいたほうが事がスムーズに進むかもしれませんし、職場から反撃されたときでも問題なく対処することが可能となります。
- メール、LINEなどでのメッセージのやり取り
- パワハラ現場の動画や写真
- 録音データ
- 被害者が書いた日記、業務日誌
- 同僚の証言
これらは証拠となります。
ちなみに、「相手に無断で(ばれないように)録音・録画をすること」そのものは違法ではありません。
なお、ハラスメントか否か?の定義ですが以下をごご参照ください。
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。ハラスメントパンフレット|厚生労働省
基本的にはハラスメントにより即日退職は成立させることが可能ですが、ハラスメントの立証が難しいケースでは以下の方法を注意して退職を成立させて下さい。
注意点1:無断退職(バックレ)はNG
いわゆるバックレは絶対にやめましょう。
バックレをしてしまうと損害賠償請求をされる可能性がありますし(ほとんどあり得ないことではありますが)、そうでなくても上司などがあなたの家を訪れるかもしれません。
そういったアクションはないとしても、あなた自身が一生怯えながら暮らすことになってしまう恐れがあります。
ですからきちんと法を守って退職してください。
自力で退職するのが難しいのであれば、「退職代行サービス」などを使うのも一つの手です。退職代行サービスを利用するのは合法です。
注意点2:適応障害や鬱病は放置しても治らないため退職する
適応障害や鬱病は放置しても治らないですから素直に退職しましょう。先ほどもお伝えした通り、診断書を作ればスムーズ退職することができるでしょう。
ただ、本質的には、「鬱病や適応障害かどうか」よりも「あなたが精神的に辛いかどうか」のほうが重要であり、どうしても病名をはっきりさせなければならないというわけではありません。
本当に苦しいのであれば、退職代行サービスを使うなどして一刻も早く辞めましょう。
リンク=うつ病 即日退職
注意点3:退職により損害賠償請求されることはまずないものの例外はある
・手間をかけてまで損害賠償請求をするメリットが薄い
・損害賠償請求をすることで「辞めた側」に反撃される可能性もある
などの事がありますから、退職をしたからといっても損害賠償請求をされる事はまずありません。
(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
ただし、
・長期の無断欠勤をし、そのままバックレる
・退職のときに他の社員を引き抜く
・バックレにより、企業にとって非常に重要な契約ができなくなった
など会社に多大な被害が及んだ場合は、その限りではありません。
「リターン」ではなく、「制裁」を重視して損害賠償請求などを行うかもしれません。
職場いじめでも即日退職できる可能性がある
いわゆる「職場いじめ」を理由に即日退職できる場合もあります。ただ、「いじめがあれば、即日退職できる」という法律が存在するわけではありません。
参考:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概要」
ですから、「いじめによって安全が脅かされている」と証明しなければなりません。
そのためには以下のような証拠を集める必要があります。
・身体的な被害の証拠(怪我や殴られた痕など)
・精神的な被害の証拠(心療内科で診断書を作ってもらうなど)
証拠をベースに労働契約法違反とみなされれば、即日退職が成立するかもしれません。
参考:労働契約法5条違反
ちなみに「職場いじめ」だけでなく、「嫌がらせ」についてもほぼ同じことが言えます。証拠を集めて、即日退職を目指しましょう。
パワハラについて民事訴訟するかどうかは慎重に決めるべき
酷いパワハラを受けた(と感じた)場合は、民事訴訟をするという選択肢もあります。
ただ、以下のようなデメリットもあるので慎重に検討してください。
デメリット1:弁護士費用が高い
安価で引き受けるタイプの弁護士もいますが、それでも弁護士費用の相場は数十万円以上です。
そしてパワハラに関する慰謝料の相場は50~100万円程度ですから、差し引きでマイナスになる可能性さえあります。
デメリット2:敗訴する可能性もある
判例を調べると分かりますが、「客観的に考えるとパワハラにしか思えない」というものであっても、敗訴するケースは少なくありません。そして敗訴すれば当然慰謝料は入ってきませんし、自尊心も回復しないでしょうから、リターンが全くなくなってしまいます。
デメリット3:判決が出るまでに最長で数年かかる
通常は3~6か月程度で判決が出ますが、二審、三審へと進めば数年以上かかってもおかしくありません。
また、たとえ3~6か月で判決が出るとしても、「最初はモチベーションが高かったものの、そのうち精神的に辛くなってくる」ということはあり得ます。
ここまでパワハラで民事訴訟をすることの主なデメリットを紹介しました。
基本的には「退職届を出して、あとは有給消化をする」(労働基準法第三十九条)
「退職代行サービスを使う」などの方法で穏便に退職し、民事訴訟をすることは避けたほうが良いでしょう。
契約社員がパワハラなどで即日退職する場合
契約社員はいわゆる「有期雇用」ですから、他の雇用形態(正社員、アルバイトなど)とは少しルールが異なります。基本的には、「次の契約更新のときに契約延長をしない」ことで退職できます。
ですが以下のいずれかの条件を満たしていれば、即日退職(または実質的な即日退職)をすることが可能です。
- 双方の合意がある
- 「やむを得ない事由」がある
- 1年以上労働している
- 契約内容(就業条件)と実際の業務内容が違う
「やむを得ない事由」としては、
- パワハラ
- 給与不払い
- メンタル的な問題(鬱病、適応障害など)
- 本人の病気や家族の介護
などが挙げられます。
パワハラから逃げ出すために即日退職するポイントをケース別に紹介!
パワハラから逃げるための手段は正社員や契約社員、パート・アルバイトといった雇用形態によって異なります。
ケース別にみていきたいと思います。
1.正社員のケース
有給の利用や欠勤扱いにして即日退職出来る
民法第627条で「退職を要請してから2週間経てば退職できる」と決まっているので、仮に「辞めます」といって2週間後から出勤しなくても損害賠償請求されることはないです。
しかし退職の意志を伝えてから有給を獲得すれば、実質即日で退職できます。有給休暇の取得は労働者の権利ですから、取得を希望すれば会社が拒否することは不可能です。
正社員のような無期雇用であれば半年以上勤務していてそのうち8割以上出勤していたといった場合10日の年次有給休暇が付与されます。
もし有給が2週間分もないとすれば「体調不良といったどうしようもない理由」で欠勤することもできます。
2.契約社員のケース
一定の条件を満たしていれば即日退職出来る
契約社員は有期雇用のため民法627条の適用外です。それにより通常の場合であれば契約更新時に次の契約を結ばないことで雇用期間が終わります。
しかし以下の条件のいずれかにあてはまれば、契約期間中でも退職できます。
契約期間中でも退職できる条件
- 辞めなくてはならないやむをえない根拠ある
- 会社の同意がある
- 1年以上勤めている
ケガや病気だけに限らず、パワハラや未払い賃金なども「辞めなくてはならないやむをえない理由」にあたります。
また契約社員でもその職場で1年以上労働していたら、正社員と同じ条件で即日退職可能です。
3.パート・アルバイトのケース
民法第627条に乗っ取り退職する
この様に考えているケースでは、パワハラの証拠を集めて立ち向かうことが重要ですが、「一刻も早く職場と縁を切りたい」というのなら、パワハラのことにはあえて触れずに民法第627条通り「2週間経過してから」退職するようにすべきです。
パート・アルバイトでも、辞めるまでに有給取得が可能です。
週の所定労働時間が30時間未満、かつ週の所定労働日数が4日以下かもしくは年間48日~216日のケースでは、所定労働日数に応じた有給休暇は付与されます。
どうしても即日退職したい場合➡退職代行サービスもあり!
退職する方法がわかっても、「退職します」とは言い出しづらいものです。
それにパワハラ上司と2人だけで話すことや、引きとめに合ったときにうまく対処出来るかというようなことに不安を抱く人も多いはずです。
そういったときは退職代行サービスを活かしましょう。
退職代行のメリットは?
- 退職の意志を代わりに伝えてくれる
- スムーズに即日退職できる
- 有給消化の意向も伝えてもらえる
- 有休などの退職に関わる交渉をしてくれる
退職代行に任せたら、自分で「退職します」と言うストレスから解放されます。
しかも有休や未払いの給与の交渉も行ってくれるので、自分が考えている通りの退職を実現できるでしょう。
ただし退職代行業者もたくさんあって、対応できるレンジやサービスにバラつきがあります。
退職の意志を伝えてもらうのみであればどの業者でも対応していますが、有休や未払い給与などの交渉を望むなら、交渉権のある労働組合か弁護士が運営元の退職代行業者にお願いするようにしましょう。
民間業者は合料金相場が安いのでお手頃なようですが、交渉権がないです。
万が一会社が「退職代行では退職を認められない」と言ってきたケースだと、交渉ができないため退職自体が失敗するかもしれないので気をつけて下さい。
